台北生活の日記

台湾漁船で見つかった密輸猫154匹は安楽死。人と動物を護る検疫制度や執行者に罪はない。

漁船の底から見つかった密輸のゲージは62個、猫は154匹。
品種はロシアンブルー、ラグドール、ペルシャ、アメリカンショートヘア、ブリティッシュショートヘアなど。
動物愛護団体の働きかけもありましたが、台湾の検疫法制度に則り154匹の猫たちは処分されました。安楽死です。

 

https://udn.com/news/story/122411/5691703

このニュースを追っていると、いやでも並んだケージやその中にいる猫たちの様子を目にします。怒りと絶望感の繰り返し。読むのも苦しい。なぜ猫たちは処分されたのか。
台湾の動物検疫は、他国に比べても厳しい措置を取っています。
私は猫を香港から連れてきましたが、狂犬病の予防注射や血液検査で輸出条件をクリアしていても、台湾に到着後3週間の隔離検疫が必要でした。
同じように輸出条件をクリアして、香港や台湾から日本へ行った友達の猫たちは、到着当日に検査後は隔離なし、空港から直接帰宅しています。

 

狂犬病に感染していて、もしそれにヒトや動物が感染し発症すれば、致死率はほぼ100%といわれています。
日本の厚生労働省のサイトには「治療に有効な薬はない」「治療はしない」と記載されていて、唖然としますが……
狂犬病 | 厚生労働省

 

台湾も、以前は狂犬病清浄地域でした。2010年に私が不浄地域である香港から猫を連れてきた時はそうだった。その後この島国で狂犬病が見つかったのは、どこからか入って来た汚染された動物が原因と考えられます。

台湾の飲食店で掲げられている「台湾のブタを使っている」という表示、これも、長い時間をかけて口蹄疫汚染を浄化した安全の成果と誇りなのだそうです。

台湾にいるヒトや動物たちを狂犬病や感染症から護る法の制度。
そのために、154匹の猫たちは、漁船の底で長い旅の後、安楽死となりました。柔らかいブランケットに包まれることも、人の腕や膝に甘えることも、つけられた名前で呼ばれることもなく。
たとえそれが仕事であっても、決定し、執行しなければならなかった人たちの心の平安を願わずにいられない。
154匹を救えるものなら救ってあげたかった。けれども、どうやって?一匹ずつ検査を?場所や、対応人員の確保は?
もし感染していなかったとしても、その後は?
日常生活では情が法を凌駕することも多々ある台湾だけれど、検疫に関しては泣き落としは通用しません。私も台湾の検疫所で、凶暴な猫でご迷惑をおかけするから、自宅で隔離させてくださいと申し出たけれど、笑顔で断られました。慣れているから大丈夫ですよ!と。

 

この件は台湾でも様々な議論がされていて、SNSにも中国語の見解がいくつも流れてきました。愛猫家としても知られる蔡英文総統もこの件に言及、法の制度見直しを示しています。

 

 

多くの人は、法や制度、執行した人たちの罪ではないと理解しています。
罪は正規の手続きを取らず、密輸を企てた人たちにある。
命を使って手っ取り早く利益を得ようと危険を顧みない愚かさにある。
出発地での予防接種と血液検査から半年以上の待機期間、そして台湾到着後の検疫にかかる費用や売り物の猫にかかる税金をまるまる省くために密輸を企て実行した人たちにのみあります。
この漁船順發886號は、前にも別の船長でタバコ密輸の前科があるそうです。その時は罰金100万元。今回の船長も罰金だけでなく、ライセンスはく奪になるのだそう。
それにしてもこの船長がひとりでこれだけの生き物が入ったケージに対応できるとは思えない。
用意した送り主はどこの誰で、荷受けをするはずだった人たちは?
154匹の猫たちは台湾で、どんなルートでどこへ売られていく予定だったのだろう。そこも突き止めて、外道は根こそぎお白州に引きずり出されて厳罰を受けてほしい。ずるさと、目先の利益に抵抗できない命を使い、周りの人たちにも危険を及ぼす可能性を作った罪を、無知や金目当てのためと片づけないでほしい。台湾環島引き回しでもまだ足りない。中元節の地獄の門は閉まるけど、別の穴から全員地獄に堕ちればいい。畜生どもが。

 

ちょうどこのニュースを聞いた日、迪化街のいろんなお店で、何匹もの保護猫たちに会いました。百戦錬磨の台湾のお母さんたちもお手上げのメロメロ、可愛がられることに慣れ切ってのんきな保護猫たち。
船底に積まれた子たちは、どうして違う運命になったのか。
猫たち、どうか安らかに。助けられなかった。謝ることもできない。せめてもと手を合わせることしかできない。
次に生まれてきた時には、明るい暖かい柔らかい場所で生涯の最初から最後の日まで1秒残らず幸せでありますように。

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mimi
ライター/コーディネーター。 香港から猫を連れて台北へ移住後、30年ぶりに東京暮らし。満喫中。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|