ビーチハンドボールのヨーロッパ選手権でノルウェー女子チームがビキニを着用せず罰金。東京オリンピック香港代表のバドミントン選手は代表マークなしの自前の黒Tシャツで出場し炎上騒動に。でも私達が観ているのはウェアではなく試合、アスリートが戦う姿そのものでした。
私はスポーツに縁が無く、せいぜいスタジアムやテレビでサッカーを観る程度。それでも、応援するクラブや日本代表のレプリカユニフォームを着るのは恐れ多くも晴れがましく、背筋が伸びる思いがします。国旗やクラブ、チャンピオンズリーグやブンデスリーガなど大会のエンブレムがついていれば、尚のこと。敬意をもって、大切に扱わなければならないと考えるようになりました。
着ようと思って出しておいた日本代表のレプリカシャツに猫がじゃれついているのを見た時は「ひぇえええそれだけは勘弁して」と声が出たものです。
東京オリンピック2020が開催されても、新型コロナに警戒中で規制のある台北に居ながら、日本の国旗を手に持って振るチャンスは多分ないでしょう。テレビやネットを追っていると、勝った負けたの記事の中に選手が着用するユニフォームに関するニュースがいくつか出て来て気になりました。
ひとつは、ビーチハンドボールのヨーロッパ選手権でノルウェー女子チームがビキニパンツではなくショートパンツを着用して試合に出場し、規定外のため罰金を課せられたこと。
もうひとつは、東京オリンピックで香港のバドミントン男子選手が試合で着用したシャツに「バウヒニアの花」香港の地區旗が付いていないと親中派の議員が指摘、騒ぎになったため、大会中の選手自らSNSで事情を説明したことです。
ビキニパンツを拒否して罰金。アスリートにも観衆にも不安を与えるユニフォームは必要?
【ビキニ義務付けと闘う】⁰
ビキニ着用を拒否して罰金を科された、ノルウェーの女子ビーチハンドボールチーム。歌手のピンクさんが、罰金を肩代わりすると表明しました。
「性差別にこそ罰金を」とコメントしています。https://t.co/liEax29fDw
— ハフポスト日本版 / 会話を生み出す国際メディア (@HuffPostJapan) July 26, 2021
この写真が、罰金の対象となったショートパンツのようです。
これを着るといつもより高く飛べる!砂の抵抗もへっちゃらさ!など反則技ならともかく、どうしてビキニパンツじゃなきゃだめなんだろ。他のチームはどんなユニフォームを着ているんだろう?
「ビーチハンドボール」で画像検索をすると「これは観ていられない」と私は感じました。ここにはあえて載せないけれど、ヒップに食い込む小さなビキニで飛んだり跳ねたり、砂に足を取られることだってある。見る側としては選手がショートパンツを着用してくれたほうが、安心して競技観戦に集中できるのではないかと思います。「選手のビキニの面積を気にして見ているほうが嫌らしいです!」と言われてしまったら、お手上げだけど。競泳はどうだ、新体操は、シンクロナイズドスイミングは……とあげだしたらキリがありません。
でも、「アスリートも観ている側も不安にならず、競技に適した布の面積」というものは、あるんじゃないだろうか。「イヤだ」と感じたり「恥ずかしい」と誰かにいたたまれない思いをさせる、そんな格好を規定されるルールが堂々と残る21世紀なんて。スカート丈を巡って校則や先生とイタチごっこを繰り返した私たちの昭和時代は遠い昔。今では私の母校も、生徒がスカートやパンツから制服を選べるようになりました。オリンピックやスポーツが「多様化」を謳うなら、せめて「ビキニかショートパンツ」の選択肢があっても良さそうなのに、そういうものではないのかな?
女子選手のユニフォームが小さくなければ客を呼べずスポンサーもつかなくて協会が立ち行かない、継続できない。もしもそんなレベルの競技なら、いずれは淘汰されるのじゃないだろうか。競技を行う本人がユニフォームの在り方にものをいうのは、わがままだろうか。協会や偉い人、スポンサーがアスリートに「やらせてやっているんだから、黙って従いなさい」という環境なんだろうか。
香港バドミントン男子選手、黒一色のウェアで香港區旗がないと強い非難を浴び釈明。
香港のバドミントン男子の伍家朗選手が香港區旗のシンボル「バウヒニアの花」がついていない黒の上下セットで試合に臨むと、ある親中派の議員が「強く非難」したそうです。「香港代表を名のるのがそんなにイヤならやめちまえ」などとSNSで糾弾。選手が着用した黒いTシャツそのものを、政治的な意図を表していると決めつけ、きな臭い感じに一部が燃え始めると、まだ東京にいてこれからも試合が続く伍家朗選手本人がSNSで
「自分には今、ユニフォームを提供してくれるスポンサーがいない。個人では地区旗をシャツにプリントする権利もとれず、手持ちの着心地の良いウェアで出場した」
と状況を説明。
「ウェアよりも、試合を観てくださいね」
と穏やかに切り返しました。
【東京奧運】伍家朗球衣風波 張國鈞矛頭轉批羽總 羽總承認溝通出問題
羽總指,已跟民政事務局聯絡,並會與港協暨奧委會檢視日後有關隊服設計和溝通安排。駐東京的港協暨奧委會秘書處會提供協助,幫助家朗在出戰下一場賽事時,穿上印有區旗的球衣出賽。 pic.twitter.com/wTjC4gmANc
— Stand News 立場新聞 (@StandNewsHK) July 25, 2021
高らかに火つけをしたこの議員、どこかのガッコのセンセイらしい。事情も知らずにかみついた挙句に謝りもしなかったので結局本人が火だるまになり、Facebookアカウントを削除して逃亡したようです。
ところで同じバドミントンでも、混合ダブルスの選手はYONEXがスポンサーについており、ユニフォームにバウヒニアの花が確認できました。
【東京奧運】港隊羽毛球混雙旗開得勝
羽毛球混雙小組賽,港隊謝影雪、鄧俊文組合旗開得勝,有驚無險地以盤數 2:1 擊敗馬來西亞組合。謝、鄧先取第一局,其後對手傾力反撲,以大比數之差取第二局,決勝局戰情緊湊,港隊終抵住壓力勝出。分組賽下輪將於明午舉行,港隊對手為中國隊王懿律、黃東萍組合。 pic.twitter.com/qf6oihZk8V
— Stand News 立場新聞 (@StandNewsHK) July 24, 2021
この人たちはいいけれど、オリンピックに出る選手にスポンサーがつかない場合もある事実に、単純に驚いてしまう。それまでは伍選手にもYONEXが協賛していたけれど、契約が手続き上間に合わなかったなど事情はあるようです。
その後、ネット民が伍選手の着用していたウェアを拡大してチェックし、ヨガウェアブランド・Lululemonのものだと判明。確かに伸縮や通気も良いし、運動には適しています。それに色味もよく見れば、黒というよりチャコールグレー。ヨガウェアに接したことがある人ならわかる、真っ黒ではない濃い色です。さらにネットの人々は「ヨガウェア界のCHANEL」「スポーツウェアのApple」と言われるLululemonに「伍選手のスポンサーになって」と嘆願する流れに発展したのだとか……。香港代表チーム全体はFILAがスポンサーなので、そちら方面からどうにかするという話もあります。
まさかの敗退。試合後の選手のことば。
7月28日追記
伍家朗選手に香港地區旗付きのユニフォームが用意されたとニュースに。FILA提供です。
【換衫再戰】
東京奧運羽毛球男單賽事,港隊一哥伍家朗,24 日出戰分組賽,穿只有名字和代表地區的上衣出賽,被建制派批評,他後來解釋是因為無贊助球衣,使用區旗要獲批准,他因要自行印球衣未及申請,羽毛球總會稱會盡快處理。
伍家朗今(28 日)再出戰分組賽,改換上綠白色有區旗的球衣出賽。 pic.twitter.com/L2QxMvn4MR
— Stand News 立場新聞 (@StandNewsHK) July 28, 2021
試合は残念ながらグアテマラのケビン・コルドン選手にストレート負け。ユニフォーム騒動のお陰で、バドミントンの試合に注目し観ることができた…というのは観る側の非常に気楽な、楽観的な考えだったとあとで思い知らされます。
まさかの敗退でベスト16を逃した伍選手は試合後のインタビューで、ユニフォーム騒動が心理的に影響を及ぼしたのではないかという問いかけを否定はせず「出来る限り気持ちを整えて試合に臨んだ」と答えたそうです。
【意外出局】有否受球衣爭議影響? 伍家朗:已盡量調整心態 發帖稱或注定做悲劇主角
その後、伍家朗選手はご自身のインスタグラムでメッセージを発しました。
応援してくれる皆さんのメッセージは全部読みました
全て受け取りました
感動し、心が温まりました
私はひとりぼっちではないのだと。
悲劇の主人公と決めつける人はいるかもしれないけれど
私は必ずまた立ち上がる。
ただ、少し時間が必要です。
7月30日追記
香港の著名なアスリートたちからも、伍家朗を思いやり、的はずれな批判を非難する声が上がっています。
【球衣風波】香港足球界不點名批穆家駿 牛丸陳婉婷:膚淺 梁冠聰:基本需要都唔知
アスリートにとって何年も続けた努力、一生に一度かもしれない国際試合の舞台に代表として出場するチャンス。ユニフォームの色をあげつらい攻撃する無知と卑劣さに呆れ、静かで決して緩むことのない怒りが、香港プレミアリーグ東方獅龍GK葉鴻輝さんのメッセージに詰まっていました。
「応援をしなくてもかまわない。ただ、妨害をしないでほしい。」
ウェアより試合、観たいのはアスリートの姿そのもの
地区旗の是非はともかく、代表のシンボルが付けられない、スポンサーもつかず手持ちの自前のウェアでオリンピックの試合に出た選手の気持ちを思うと、とても切ないように思えます。
でもそれは、「イヤならやめちまえ」などと短絡的に強く非難し吠えた人と同じくらい、頓珍漢な考えかもしれない。
ウェアではなく、試合を観てください。
ノルウェーのビーチハンドボール女子チームと香港の伍家朗選手、ユニフォームがらみの異なる問題がふたつ起きたと思っていましたが、書いているうちに、同じ答えにたどり着きました。
ビキニパンツでもショートパンツでも、何色で、どんなロゴがついていようと、或いはシンプルな無地であろうと、私達はアスリートが相手や自分自身と戦う姿を見ている。試合前のまっさらなユニフォーム姿でポーズをとるサッカー選手もカッコいいけど、泥や芝生、汗にまみれて走る試合中のアスリートの姿に、私達は心を揺さぶられる。試合が始まってしまえばもう、ウェアを気にして見ていません。

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