ふくみみコラム

トーベ・ヤンソンのムーミン原画を観た東京の上空、中国人に香港人ですかとたずねられる黄昏時

東京で梅雨が明けた日、連休前の夕方に「トーベとムーミン展」を観に行きました。ラジオのニュースで小学校は明日から夏休みと言っていたから、ちょっと急いで出かけた。

六本木は、私には相容れない街です。東京で育ったものの、バブルの頃にも親しまず、たぶん数えようと思えば数えられるほどしか来ていない。思い出す人も味も、景色もない六本木。森ビルに来るのも、この日が初めてでした。フィンランドから来た、トーベ・ヤンソンの原画展を観るために。

 

52階の会場までどこからエレベーターに乗るのか見回すと、小さな螺旋階段がありました。スタッフが「止まらずに進んでください」と日本語で書かれた指示を掲げて立っていたので上ろうとすると、私の近くで男の子がふたり立ち止まり、何か慌てている気配。私はイヤフォンで音楽を聴いていたので彼らの言葉は聞こえなかったのに、中国語で「このまま上っていいんだよ」と伝えました。イヤフォンを外すと、彼らは嬉しそうに「ありがとう」「ここからエレベーターに行けるんだね」と私にはなじみのない訛りのある中国語。「そうだね」と簡単に答えると「あなたは香港人?」ひとりにたずねられ、一瞬絶句してしまった。「私は…以前、香港に長く住んだことのある…日本人です」そう答えると、ふたりはちょっと目を見開いてた。彼らの話し方、私の話し方、お互いになんとなくどこの辺りか察しがつく訛り。ムーミンを見に来た六本木で思いだしました。

 

絵を観る機会は、日本に戻ってくるまでありませんでした。香港で知り合った友達が描いてくれた、福ちゃんの絵。富山の富岡、藤子・F・不二雄ミュージアムで観た、おばけのQ太郎の原画。クリスマスの銀座の書店に展示された、佐野洋子さんの絵本の原画。荻窪の書店で見つけた、トーベ・ヤンソンのムーミンの原画をまとめた本。絵に引き込まれ見入り立ち尽くす、呼吸と涙を体に感じる体験を、日本に帰って初めて知りました。

 

何年も馴染んでいたつもりの、身近で、知っているはずだったものの絵の力、原画の力、絵が描ける人ってすごい。なぜ描くの。どうやってこの線と色が、ひとの手から生まれるの。

 

トーベとムーミン展~とっておきのものを探しに~

-Information-
2025年7月16日(水)~9月17日(水) ※会期中無休
10:00~18:00 (金・土・祝前日は10:00~20:00)
※入館は閉館の30分前まで
※土・日・祝日および平日のうち特定日(お盆期間の8月12日〈火〉~15日〈金〉、会期最終週の平日9月16日〈火〉、17日〈水〉)は日時指定制

 

佐野洋子「わたし クリスマスツリー」銀座・教文堂の原画展で、100万回生きたねこをとうとう買った。佐野洋子さんの絵本「わたし クリスマスツリー」の原画展へ平日の晴れた昼、銀座に出かけました。書くということ、むき出しの丸出しのようでいて、整えられたリズム。ずっとずっと教えてくれている佐野洋子さんの本や絵がいつまでも残っている、残す努力をしてくださるひとたちがいる。ありがたいことです。...

 

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ABOUT ME
mimi
ライター/コーディネーター。 香港から猫を連れて台北へ移住後、30年ぶりに東京暮らし。満喫中。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。