昨冬の寒さと春から夏の長雨がひびいて、今年の台湾はマンゴーの数が少ない。価格も高くて、気安く手を伸ばしにくい。今までなら7月にもなれば1斤あたり60元前後まで降りてくるのに、いまだに初物のような価格で売られているものもある。
でも、マンゴーが高い、高いと簡単に言うのも気が引ける。苦労して育て、収穫の予測と見積もり、これまでのお付き合いを考える卸値に頭を悩ませていると思うと、「高いわね」と消費するだけの立場での物言いはどうしてもできない。西瓜も値上がりしたし、お弁当や飲み物も、5元、10元と値段を調整している。
今日も今日とて暑いので西瓜を買いに行ったら、ひとパック60元だったのが70元に値上げされていて一瞬ひるみました。
「もともと原価すれすれだったから…。また値下げしたら、言うね」と果物屋のおじさん。
商売だから、当たり前だよね。ボランティアじゃない。スイカも、人の時間も。 pic.twitter.com/4EOSs4wh3g— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) July 11, 2022
食べ物に限らない。衣類にしても、安いものがつくられる陰で泣いている人がいると指摘した川久保玲氏の記事を読んで以来、安いとか、高いとか、口に出したくはないと思うようになった。それから自分で考える。これは法外に高いのか、誰かが泣かなければならないほど、安いのか。これをどんな人が作っているのか。作った人は幸せか。手にしたり、口にする私は幸せか。
今年は例年より価格も高く、数が少なく、日本への宅配申込みは予定を繰り上げて打ち切られた。
2010年に台湾へきて、マンゴーの販売や農家の動向に少し関わったけれど、ここまで苦しいのは2012年以来のことだと思う。あの年は、マンゴーの通販が終わって出かけたサロンで、円形脱毛症があると告げられた。それから毎年、だいたい夏場にはハゲが出たし、最初の2~3年、私は台湾のマンゴーを口にすることさえ拒否反応が出た。それくらい、自然のものを契約した値段で綺麗な状態を守ったまま海を越えて届けるのは緊迫していたし、きちんと届いて喜ばれることに、やりがいがあった。
今年のライチは良くできて、数も多かった。嫌いではないけど、買うことはあまりない。でも今年はマンゴーを考えて見送る分、市場でライチを買って食べた。日月潭の紅茶にあわせるとライチの香りがうつって、これは台湾でこの時期だけ楽しめる美しい飲み物だった。
マンゴーは少し部屋に置いて追熟がてら、アロマを楽しむ。何か音楽を聴かせたら甘くなるかな。何がいいだろう?台湾の夏は日差しが強いぶん、繁華街はともかく、住宅街は昼寝をしているみたいに静まりかえる。しんとした真夏の台北の部屋で、南から来たマンゴーの香りの中で昼寝は幸せだ。
台湾の果物について書いたコラム
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