左腕にあるBCGの跡を、長年気にも留めずに生きてきました。
最初に「これが目印になる」と気づいたのは、まだ携帯電話が普及していない時代の真夏の香港、尖沙咀の廣東道で。顔を知らない待ち合わせの相手に「ミミさんですか」と声をかけられ「そうです、よくわかりましたね!」と驚くと
「腕にBCGの跡があるから、日本の方だと思って」。
そう言われて初めて気が付いた、香港の人達の腕には、このハンコのような印は無いこと。
香港の職場で同僚に突然
「ミミさん、どうしたんですかこれ!」
飛びつくように私の左二の腕を掴んで叫ばれたこともありました。
「BCG注射の跡ですよ」
やっぱり珍しいのかな。それにしても、あまりの驚きようにちょっとたじろいで答えると
「跡が残る注射?こんなのがあったら、ミス香港コンテストに応募できないじゃない!」
ちょうど、毎年恒例のミスコンテスト「香港小姐」の季節でした。
「そうなの?でも私は応募しませんし…日本のコンテストでは、特に問題にならないと思いますよ」
同僚はちょっと落ち着いてからも「あり得ない、あり得ない」としばらく憤っていました。私には当たり前すぎて目にも気にも留めなかった、腕に並ぶハンコのような注射跡。見慣れない人には、異様な印と感じるのかなあ。
新型コロナウイルスがまん延してからいろんな話が流れて来て、「日本や台湾の死亡率の低さは、BCG予防接種の東京172株が効いているのではないか」とまことしやかなデータまで出ているのを見ました。台湾の衛生福利部(厚生省)のサイトなどを見ると、台湾でも数年前から日本と同じTOKYO172 というタイプを導入しているらしい。どうなんだろうねえ、でも私達が打ったの、昭和だよ?まだ効いてるなんてこと、あるのかな。
そんな話を台北・永康街のカフェで年下の友達としていたら、
「私もありますよ!」
彼女は自分の腕のBCG跡を見せながら
「私の友達も、なにこれっ?と驚いたけど
『ドラゴンボールみたいでカッコいい』
と言われました」
ドラゴンボール!
私達はお白洲で片肌を脱ぐ遠山の金さんさながら、桜吹雪ならぬ「ドラゴンボール」を見せあって、大笑いしました。
今度誰かにたずねられたら、「これ?ドラゴンボールよ。」と澄まして答えてみよう。
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