夜の薬局へ、医療用のマスクを買いに。
ガラスのドア越しに見えた様子だけでも、いかにも清潔で感じの良さそうなお兄さんがカウンターにいました。
「こんばんは。マスクは買えますか」
言いながら全民健康保健カードを差し出すと、
「もちろん!こちらへどうぞ」
と爽やかすぎる笑顔の対応。
マスクは10枚入りで40元。
台湾でマスク実名制販売が始まったころは、無造作な茶封筒入りだった。その後はイラストと注意書き入りの白封筒になったけど、やっぱり無造作包装でした。
私はここしばらく箱入りのカラーマスクや季節の柄物バージョンを使っており、薬局系はご無沙汰。久しぶりに買ってみると、透明のジッパー付きパッケージに進化していました。「おお~」と思わず声をあげ「ばふばふ」と感触を楽しんでしまいます。
無造作封筒時代は、封筒へマスクを封入する仕分けも薬局の仕事だったみたい。今は最初からこのようなパックになって、だいぶ負担も軽くなったようです。
健康保険カードではマスクの購入歴はもちろん、私の名前や情報を見ることができます。爽やかな薬局のお兄さん、先ほどの接客用とはちょっと違う、個人的な戸惑いや好奇心がにじむ笑顔で
「あなたは、日本人ですか……?」
と尋ねて来ました。
「はい。変な名前だから、分かりますよね」
奥から出て来た眼鏡をかけたベテラン風の女性は、我々の会話を聞いて微笑みながら自分の仕事をしている様子。
私も笑いつつ、日本人なのかと尋ねられるのはとても久しぶりのことだと考えました。
変な名前、と私が言った時お兄さんは首を横に振り
「日本に行きたいです。しばらくは、難しいけれど」
「私もです。もう1年以上、日本へ帰っていません。家族にも会っていません」
ベテラン風の女性は仕事をしていた顔をあげて私に向き直り、
「1年も」
「はい」
お兄さんは何か言いかけて黙っていたけれど、
「ありがとう。またね」
私がマスクのパックを持った手を振ると、ベテラン風の女性とともに、マスク越しの笑顔で手を振り返してくれました。
マスクをしていると表情がわからない、伝わりにくいと恐れるむきもある。でも、声や眼、眉の形、相手に向ける体の向きでいろんなことが伝わると、薬局の人たちは素の対応で、身をもって教えてくれました。
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