秋は修学旅行シーズン。西門町や迪化街で、自由行動をしている日本の高校生たちに出会う。
今日も、取材先に高校生の女の子たちが5人いた。記事のネタにもなるし、個人的に構いたくなってしまう気持ちもあったので声をかけ、少しおしゃべりをした。品の良いおしゃれをした素直な女の子たちの楽しそうな様子、可愛かったな。見知らぬおばさんに声をかけられても警戒することなく、かといって出しゃばったり大騒ぎしたり、まじやばくないうける、などと言われることも無く、とっても気持ちの良い子たちだった。
先日は西門町で、制服姿の子たちのグループと信号待ちで一緒になったので「修学旅行だね」と友達にそっと伝えると、聞こえてしまったのか女の子たちは笑顔でふりむき「はい!」
私はおばちゃんなので、
「可愛いわねえ~」
と思ったことを口に出してしまう。異国の街で、変に構えず、でも溌溂と楽しそうにしている様子を見ると、なんだか涙が出て来そうになる。
仕事で、日本の芸能人の方をアテンドすることが時々ある。台湾の人気観光地での撮影になると、人だかりにならないか、どう捌けばよいか考え、緊張する。現地に到着し、駐車場で修学旅行のバスがずらりと並んでいるのを見た時の絶望感。どうしよう、と内心震えているのは私だけで、クルーも芸能人の方も慣れた様子で自然に振舞っている。
修学旅行らしい、制服姿の日本の女の子たちと何人もすれ違う。気づかないで、気づかないで、と祈るような気持ちでいても、芸能人のオーラや周囲から浮き上がる美貌を袋に隠して持ち歩くこともできず、気づかれる。
目を見開き驚く女の子たち。私は警戒するけれど、大体取り越し苦労で済んで、大騒動になることは無い。
みんな周りに迷惑にならない程度に興奮をはじけさせ、無邪気に喜び、しつこく追ってきたりもしない。無断でいきなり写真を撮ることもない。
(私が緊張するのは騒動になることよりも、写真を撮られること。若い子より、良い年をした大人のほうが黙ってこっそりスマホを向けてくる。丁重に撮影をお断りすると、明らかに不満そうにしたり、嫌みや罵倒を叩きつけてくるのも大人だけ。)
修学旅行の子たちは、大人たちのようにやたらと記念撮影に精を出すでもなく、映える場所やモノを狙うでもない。周りをみたり、おしゃべりしたり、旅そのものを楽しんでいるように見える。そんな様子が、可愛くて可愛くて仕方ない。
素直にのびのびと、綺麗なものを綺麗と感じ、いままで知らなかった匂いに驚く。通りの向こうにいる同じクラスの男子に声をかけ、男子も照れくさそうに「おう」と応じながら、女の子たちの行方をちょっと気にしている。甘酸っぱいのう。
私は自分の修学旅行中ふざけてばかりいたので、旅の背景のことはそんなに覚えていない。でも、長崎のバスガイドさんが歌った「この子を残して」に、最初は大騒ぎして聞いていなかったクラスメイトたちがいつのまにか静まり返ったことは覚えている。最後には「もうやめて…」と泣きながら懇願した子もいた。私も、黙って泣いていた。
当時憧れていた人が長崎出身で、修学旅行に行くならここからの眺めは忘れないで、と教えてもらったことも、忘れられない。
台湾ですれ違った日本の高校生たち、可愛らしい若者たち。彼らは、どんなことを覚えていてくれるだろう。忘れずにいてくれるんだろう。
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