多様化する地域の魅力と高まる観光需要
円安の長期化が大きな追い風となり、国内旅行への関心がかつてないほどの高まりを見せている。年末年始の長期休暇や春の行楽シーズンに向けて、次の目的地を思案している消費者は多い。事実、豊かな自然環境や独自の食文化、魅力的な地域イベントなど、各地の観光資源は多様化の一途をたどっており、自治体ごとの個性が際立つようになってきた。
消費者が今もっとも足を運びたいと感じている地域を探る上で指標となるのが、全国3万3449人からの有効回答をもとに集計された「都道府県『観光意欲度』ランキング2026」である。今年で20回目(都道府県の設問としては17回目)を迎える「地域ブランド調査2025」のデータがベースとなっており、全国1047の市区町村と47都道府県を対象に、認知度やイメージなど90項目にわたる詳細な調査が行われた。このランキングでは、「ぜひ行ってみたい」から「あまり行きたいとは思わない」までの意欲を点数化し、加重平均によって導き出された数値が各地域の人気を裏付けている。
観光客とビジネス客が交差する北の玄関口
常に観光客から高い人気を集める北海道も、この国内旅行ブームの恩恵を大いに受けている地域の一つだ。ただ、同地域の主要な玄関口である新千歳空港は現在、活気とともに深刻なインフラの課題に直面している。
昨年の新千歳空港における旅客数は、国内外合わせて過去最多となる2583万人を記録した。これに加えて、空港周辺では次世代半導体メーカー「ラピダス」の大規模工場の建設が進んでおり、押し寄せる観光客に半導体関連のビジネス需要が重なっている。結果として、空港駅やそこへ乗り入れる快速列車は日常的な混雑に見舞われているのが実態だ。
限界を迎える単線区間と輸送のボトルネック
現状、札幌と新千歳空港を結ぶ快速列車は1時間に最大6本運行されており、所要時間は約37分である。また、1時間に2本程度の割合で、ニセコ方面への乗り継ぎ拠点となる小樽まで直通する列車も走っており、こちらの所要時間は約80分となっている。2025年3月期には推計759万人が空港駅を利用したとされるが、快速列車の指定席以外の車両では、立ち乗りを強いられる乗客が後を絶たない。
輸送力不足の最大の要因は、新千歳空港駅とJR千歳線の南千歳駅を結ぶ区間が単線にとどまっている点にある。南北に伸びる主要路線に接続するための線路が1本しかないという物理的な制約が、札幌や小樽方面への列車の増発を大きく阻んでいるのだ。
検討が始まった2つのインフラ拡張案
事態を重く見た国土交通省は、アクセス改善に向けた具体的な検討に入った。現在、大きく分けて2つの解決案が俎上に載せられている。
第一の案は、既存の単線区間はそのまま残しつつ、空港駅からラピダスの工場付近を通って千歳線に合流する、半円状の新しい線路を敷設するというアプローチだ。これが実現すれば、列車は折り返すことなくスムーズに札幌方面へ抜けられるようになる。もう一つの案は、地下トンネルを新たに掘削し、空港駅への路線そのものを複線化するという大規模な構想である。いずれの案も現在は評価の初期段階にあり、最終的な方針がいつ決定されるかは不透明だ。
迫る量産開始と迅速な対応への要求
一方で、急激な環境変化に直面している地元自治体に悠長に構える時間はない。北海道の鈴木直道知事は国に対して、一刻も早いインフラ整備を強く求めている。
3月11日に金子恭之国土交通相と会談した鈴木知事は、ラピダスの進出によって半導体関連企業の集積が進む現状を指摘し、人の流れの急増に対応するための基盤整備を直訴した。ラピダスは来年にも世界初となる2ナノメートル半導体チップの量産を開始する予定であり、関連企業やビジネス客のさらなる流入は確実視されている。新千歳空港自体も、2029年度には旅客数を2768万人まで引き上げる目標を掲げている。
金子国交相も3月13日の取材に対し、鉄路の混雑問題への危機感を共有している姿勢を示した。「訪日客のさらなる増加や、ラピダス関連の乗客の伸びを見据えれば、必要な輸送力の確保は極めて重要な課題だ」と述べ、国としても対応を急ぐ考えをにじませている。