香港から来た友達と久しぶりに会い、楽しい夕食をした帰り道。その日の台北は寒気がやってきて、小雨降る夜は気温が14度℃ほどでした。
ホテルに戻る彼らと新生南路へタクシーをつかまえに歩いていると、後ろから来たバイクが私たちの斜め前でパタッと倒れ、大柄な男性が濡れた冷たい道に転がってしまいました。
酸いも甘いもかみ分けた、百戦錬磨の香港人のふたりが「ひゃっ」と息をのんで立ち止まり、動揺している横で、私は事故にあった人を冷静に見守っていました。
台北では、バイク事故をよく見かけます。そのたびに周りにいる人たちがわらわらと駆け寄って、荷物を拾い集め、バイクを起こし、倒れた人を担いで車道から歩道へあげ、携帯で救急車を呼びと、大事故でなければあっという間に収集します。
この時もいつもと同じ、見知らぬ人たちが連係プレーを見せていました。
「大丈夫なの」
心配そうに、恐々と見ている香港の友人たち。香港でバイクを乗る人は台北に比べたら少ないので、私も19年暮らした香港で、バイクの事故を目撃したことは一度もありません。だから台北に来て一週間目で事故に遭遇した時は、やはり友人たちと同じように立ちすくんだものです。しかし悲しいかな、あれから数えきれないほど事故に遭遇したせいか、「大丈夫でしょう」とあっさり答えました。旅人に、事故を見てしまったダメージを残したくなかったし。
ダウンにビーサン、冬の台北スタイル
気になったのは、台北にしては寒い雨の夜に、道に倒れた男性が素足だったこと。そう、彼も冬のバイク乗りにありがちな、上はダウンジャケットで足元はビーサンという「台北スタイル」だったのです。
颯爽と乗っているのであれば「いよう、クールだね」と口笛のひとつも吹いてやりたいところですが、事故を起こしたら素足じゃダメージも大きかろう。雨の日のビーサンは合理的なのかもしれない。でもやっぱり、運転には向かないです。バイクに乗る方は、どうぞ気を付けて。
車の乗り降り、隙間を縫ってくるバイクにもご用心
台北の冬は、観光客がバイクや車との接触事故に巻き込まれることが多いそうです。夕方五時過ぎにはもう日が沈み、帰宅の人のバイクが「伝説の総長の引退式か」と見まごうほど、交差点にヘッドライトがずらりと並んで壮観です。
しかも台湾は、日本と違って右側通行。まさかこちらからと思いもよらない方から、バイクはやって来ます。あの優しい台湾人が車輪を付けると豹変し、車優先、バイクはもっと俺が俺がで、車と車の隙間をくねくねと。脚で歩く時は譲り合ってくれる台湾の方々ですが、エンジンかかると180度人格が変わるので、道を渡る時、車の乗り降りの際も、左右にはくれぐれも気を付けてください。