日曜日に建國花市で買った花が、翌日のお昼前に大きく開いた。
朝起きた時には半分ほどだったので、気づいたら黄色の大輪で驚いてしまった。
黄色いものはここ数年、避けていた。「忌み嫌っていた」と言ってもいいほど、身に着けるもの、日常に使うもの、装飾品も、黄色は排除していた。2011年に青と白をチームカラーとするサッカークラブを応援し始めて、隣町のライバルクラブのチームカラーが黄色と黒だったから。イキがったにわか者の私は「このミツバチ野郎」とライバルチームの色に反応し、「青と白が我が人生」とドイツ語のチャントまで歌いだす始末。
クラブカラーが青と白のシャルケ⚽フォルダーが呼ばれた気がしたので…
春や夏も気持ち良かったけど、冬のスタジアムが忘れられない。ドイツのきりっと冷たい空気と熱気、ボールと駆け抜ける足音、響きわたるチャント、芝生の匂い。 pic.twitter.com/jml1OWL4tW
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) December 26, 2019
世界三大ダービーといわれる「レフィア・ダービー(ルールダービー)」をドイツのスタジアムに観に出かけた時、通常以上に物々しい警備に緊張したものの、自分は「青と白を身に着けたホーム側」という安心感があった。
試合中、相手クラブが得点した時には「青と白」が一斉に落胆し軽いブーイングも起きた。そんな中、「青と白」に囲まれているのに「黄色と黒」のゴールに立ち上がって喜びをあらわにしてしまった男性がいた。
レフィア・ダービーはプラチナチケットなので、黄色と黒で埋め尽くされるアウェー側の席が取れなかったのだろう。青と白に囲まれて、彼はどんな気持ちでそこに座っていただろう。危険回避のためか、そのひとは黄色のユニフォームもマフラーも身につけず、キャメル色のコート姿だった。
私のような一見して外国人とわかる観客は黒い髪と肌の色だけで周囲から浮き上がる。それでも、青と白のチームカラーを身に着け片言のドイツ語をしゃべるだけで、「おじいちゃんの代からサポーター」「年間シート持ってるファミリー」など筋金入りの人たちから笑顔で話しかけられ、飴ちゃん食べろと手渡され、両サイドからがっつり肩を組まれてチャントを大合唱する流れになる。
私はそれまで、何のポリシーもなく、スポーツ観戦にも興味がなかった。人生で初めて、同じ色を身に着け、同じ言語を話すと「組織」に受け入れられることを知った。
だからこそ、黄色と黒の中に紛れ込むのは恐ろしいと感じる。
得点に喜んで立ち上がってしまった人は我に返ってちょっと気まずそうにしていたけれど、周囲から攻撃されることはなかった。
台湾でも、「あの人は青」「あの企業は緑」という言いう方をすることがある。青は国民党、緑は民進党。どちらの政党支持派かを、そっと耳打ちされる。台湾では選挙権のない私たち外国人も、見知らぬ人から延々と政治論を聴かされることがあるから。
2019年の終わり、自分の部屋で黄色い花が咲いているのを見て、不思議な気持ちになる。あれだけ忌み嫌っていたけれど、黄色には美しい、活力の輝きを感じる。そういえば、今年になって香港で買ったランプも黄色を選んだ。去年だったら、この色は選ばなかった。選べなかったと思う。
黄色派と青派。香港で色分けするレストランガイドアプリが出たことは、日本でも報道された。どの色をまとっているかで、誰を支持しているか表明する。何を訴えているのか全身で表す。
黒を着ていたら殴られるかもしれない。白を着たら罵倒されるかもしれない。青を着たら軽蔑されるかもしれない。2019年には、街に出るだけでそんな恐れを抱くことがあった。
2020年に、どんな色もただ楽しく、好きな色、自分に似合う色、誇らしい色を何も恐れずに身に着けて街を歩きたい。私の身体を流れる血は、緑でも青でもない。