台北生活の日記

ことばは狩らない、指標にするだけ。

ヨーロッパに長く暮らし「ライター」を名乗る人が、現地でお気に入りのレストランやカフェを紹介するコラムを読んだ。

その人はコラムの出だしで「観光ガイドなんかにだまされずにいい店を見つけるには」というようなことを書いていた。それを読んで私は「観光ガイドなんかにって、何よ」と反感を抱き、その人の紹介する事柄を知りたいとは思えなくなってしまった。

どんな街でも、住んでいる人は現地のとっておきの場所、ガイドブックにも雑誌の特集にも載らないような店を知っているのではないかと期待されることがある。台北や香港、日本なら京都や大阪、東京だけじゃない、遊びに来た人に「地元の人しかしらない場所に連れてって」とリクエストされた経験は誰にでもあるかもしれない。

 

観光ガイドは、ライセンスを持たなければ名乗ることは出来ない国が多いと思う。街や国の歴史を、訪れた観光客の母語で説明する。ツアーともなれば治安に注意し、ホテルや乗り物、買い物や食事の案内、空港チェックインまで、旅行者の国の常識と現地の常識をすり合わせる役目もある。財布をすられた、お腹が痛い、そんなトラブルも少なくない。早朝から夜遅くまで動き回り、安全に、楽しく、有意義な旅程を守るためにガイドは気を使う。多くの人が、プロとして仕事をしている。

 

観光業、旅行業に少しでも携わったことがある人なら、ガイドはお客様と接する最前線にいること、そしてベーシックのお給料の体制も、ある程度理解していると私は思う。レストランに案内すること、観光地に案内することが、固定給のないガイドの収入になる可能性も。

 

旅行先でタクシーの運転手に「買い物に行こう」といきなりゴールドの店に連れていかれたことがあった。当時旅行慣れしていなかった私でも、これは店とつるんでいるなと感じたので「買い物はしない。私が伝えた行先に今すぐ向かってください」と強く言ったことがある。

このコラムを書いた人の経歴を見ると、旅行関係に従事していたようだ。
「ぼったくりでまずい、悪質なレストランと結託した」と形容詞がつくならまだわかるけれど、ただ「観光ガイドなんかに」と書いてしまうほど、いやな思いばかりしていたんだろうか。観光ガイドには知識も情報もなく、コミッションを貰える店しか紹介しないのかな。

国によって、街によって、ガイドの質やシステムは違うのかもしれない。でも、「誰々なんか」「何々なんか」と他者を落として披露する「自分の素敵」は、うーん?ちょっと、鼻持ちならないかな…。

これは揚げ足取り、ことば狩りかしら。でも私は、

「ガイドなんかにって、ばかにしてるんですか!訂正して謝ってください!」

とは思わない。ひとには色んな考え方があり、現地の事情もあるから。私の知らないことは世界に沢山あるから。反面、たった一言で「ああこの人はこういう考え方をするんだ」とすうっと見えることはある。全てが見えるわけではない。でも、ひととしてのベーシックなものって、言葉や小さな動作、目の動きや微笑み方にも現れる。だから、ひっかかるものは自分の中での指標にする。あとから大ごとになって「そういえばあの時」と腑に落ちた経験は、大人なら覚えがある。

言葉遣いひとつで、この人の書くものをこれからも読むか読まないかを判断する。情報を信用するかしないかは自分で決める。それだけ。そして「この程度の〝言葉のあや”に反応するめんどくせえやつ」と、私も判断される、指標にされるかもしれないね。

 

 

 

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mimi
台北在住のライター/コーディネーター。 長年暮らした香港から、猫を連れて台北へ移住しました。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|