台北生活の日記

「それくらい私にも出来る」と小鼻膨らますチャレンジャーは、ぬすっとより可愛げある

 

旧暦の元旦早々、怒っている人を見た。

 

その人は若いクリエイターで、ある広告代理店と大手商業施設にアイデアとデザインを盗まれた悔しさを率直に語っていた。言葉遣いは若く、荒かった。それほどまでに悔しく、盗んだものを大々的に発表した大人たちへの怒りが強かったのだろう。

実際に両者の作ったものを見比べると、若いクリエイターの作品はアイデアがほとばしるものの粗削り。広告として出た作品は、アイデアをより昇華させたプロの出来栄えだと感じた。それでも、接触しながらアイデアだけ持って行かれて蚊帳の外へ追いやられ、大切なものを盗られたと感じた若いクリエイターの無念を想像すると、胸をかきむしって七転八倒するほど悔しいことだ。結局、商業施設と広告代理店は「模倣の意図はなかった」「不快な思いをさせたお詫びをした」説明文を出した。

 

 

それとは少し違う話だけれど、時々、

「それくらい私にも出来る」

と小鼻を膨らませて、勝ち誇ったように言う人を見る。

 

手っ取り早くはブログやSNSの情報配信から、写真を撮ったり本を作ったり、何かを演じたり、踊ったり歌ったり。形になったものや成し遂げたことへの評価ではなく、それを発表した人に対する、謎の上から目線のことば。

 

「そのくらい出来る」「あれくらい出来る」と勝ち誇ったように言う人は、実際にそれをする努力をしていない。チャンスをつかみに行ってもいない。そもそも大した興味もないから、実現する苦労も喜びも知らない。そんな状態の中で、完成させた人を見ると急に「私にも、俺にも出来る」と言いだす。

 

一度、私のある仕事について、私に面と向かって
「それくらい私もできますけど」
と勝ち誇ったように言った人がいた。

 

そうですか、ではと実際にやってもらったら、散々な結果になった。彼女は二度と、出来るともやりたいとも言わなくなった。その仕事自体に思い入れや情熱はなく、「あんたのやってることくらい私は出来る」という実績が欲しかったのだと思う。

 

他人の立場やアイデアは、「私にだって出来るから」と正面から宣言せずに盗める。何度かその様を目の当たりにしたし、私自身、自分で作ったものをコピーされたり、巧妙に改変して勝手に使われたり、まるごと盗られたこともある。

 

物語の中の粋な泥棒のように「いただいたぜ」などの書置きはない。しれっとちゃっかり、黙って盗って行ったコソ泥は、その後も平気で私と交流していた。だから私は、それに気づいた時、腹が立つよりも「怖い」と感じた。盗って行くひとたちはだいたい、それまでもその後も、親し気に明るく接して来ていた。「ミミさん、ミミさん」「さすがです」「すごいです」と言いながら、虎視眈々と狙ったものを盗って行く。もしかしたら、本当は私の事を嫌いだったか、ムカついていたのかもしれない。まともな感覚を持っている、友達だと思った私がバカだったよね。

 

それに比べれば、「私にも出来る」と正面から挑戦的に言われるほうが、よっぽどましだ。いっそ潔いし、人として可愛い気があると思う。

 

盗られたなと気づいてしばらくは、心がざわつく。落ち着いてくると、経験や知識、自分の身に着けたものは決して奪われていないことに安堵する。盗んだものを実績に、ポイントとして稼いだ人を、見る人は見ている、わかる人はわかっている。わからない人たちから称賛されているのを見て、本当はそれは自分に向けられるものだったのに、と悔しく思うかもしれない。間違っていると地団駄踏むこともあるかもしれない。その気持ちはとてもよくわかる。

 

だからひと様のブログやSNS、情報ハンティング合戦やハッシュタグ捜査網、心にもない「さすがです」「素敵です」「いいね」の応酬から、私は距離を置く。SNS内で飛び交う、色付けした軽くてもろい砂糖菓子のような不気味なものの言い回しを目にすると悪寒がするから、読まずに済ましている。

 

とはいえ、どんなことも「情報」として収集し、書いてまとめる人のことは純粋にすごいなと思う。「それくらい私にも出来る」とか、「やろうと思えば、出来るけどね」などと、決して思わない。他人に頼らず盗まず、自力で自分の頭と足を動かし、努力して何かを成し遂げた「情報配信」がひとの役に立っているのだから、尊重する。

 

それでもやっぱり、情報の洪水には、目の焦点が合わない。私が読みたいブログや文章は「情報ありき」ではなく、書いた人の立場でなければ見えないもの、感じられない出来事。アーティストやアスリート、作家、フォトグラファー、料理の専門家、ミュージシャン、器を作る人。自らを鍛錬した人たちの、物や事柄に対する思いがつづられたブログや文章がいい。

 

彼らが観た風景、訪れたレストラン、食べたもの、それにまつわるちょっとしたストーリーを、検索にヒットするキーワードを埋め込まず、ブログ定型文にはまらず、自分の言葉で語る、独特のリズム。見栄えよく書かれたポエムや色付けされた写真ではない、地に足が着いている人、責任を背負った人の文章。決して誰にも盗られない、その人だけの経験と知識のフィルターを通して生まれる出来事、それを語る生き生きとした言葉、その時にどう振る舞い、どう考えたかに、興味がある。私ごときに真似することなどとうていできない、でもその振舞い方を模範にしたいと思える人の文章を読みたい。

 

盗んでいいのはねずみのチーズと、あたいのハートくらいのもんだよ!

 

 

 

 

 

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mimi
台北在住のライター/コーディネーター。 長年暮らした香港から、猫を連れて台北へ移住しました。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|