旅先でいつもいく店が忽然と消えていたとき
旅の楽しみは色々ですが、私の場合はその街に定番のカフェを作る習性があります。もともと私は、地元でもあちこち開拓せず、気に入った店に通い詰めるタイプ。そっけない、怪訝そうに対応してくるオーナーがいれば尚よろしい。通い詰めて顔を覚えてもらって、いつも同じものを頼む客だなと認識される程度のところにとどめるのが好きです。
年に一度行くドイツの小さな町。アジア人をほぼ見かけないその町を気に入って小さなホテルに連泊するのは、町の雰囲気と、好きなレストランとカフェがあるせいでした。
なのに一昨年の春、そのカフェは忽然と消えていた。ドイツ語で「Nein!(やだ!)」と叫んだのはちょっと自分でもカブレすぎと思いますが、仕方ない。だってその町のカフェに関する日本語情報は一切なく、自分で町中歩いて捜して「ここが最高」と気に入り、毎日通っていた店だったから。
小さなホテルでは、部屋にミニバーやポットのサービスもなく、レストランは朝食用。他にカフェが無いわけではない。でも、美味しいコーヒー、落ち着ける雰囲気、入って行けば「ハーイ」と顔を覚えてくれている店員さんならではの笑顔が見れる場所が消えてしまった悲しみは、一人旅の身にじんじん染みました。
経営難だろうか、持ち帰りの紙カップに蓋をする前に、「見てね」とスマイルマークをそっと差し出してきたバリスタ、すっきりした笑顔が素敵なマダムは今どこにいるんだろう・・・。そんなことも考えてしまいます。
気を取り直して検索しましょう、そうしましょう。他にお店はないじゃろか。
Google Mapで付近を検索、カフェと入力すると、ホテルのすぐ近くに新しくできた店が表示されました。通りからちょっと裏に入るので気づかなかった。早速行ってみましょう、ダメもとでもいいから、まずお店を自分で見てみましょう。話はそれからだ。
Gelsenkirchen,Buer市政府。Veltins Arenaへトラムで行ける街。
その店はちょっと気後れするほど素敵で、ドアを開けるのをためらいました。でも背に腹は代えられない、美味しいコーヒーが飲みたいのよ!とりゃ!とドアを開けると、きしむ床の音、気難しそうなロースターのマスター、コーヒーの良い香り、温かいマダムの笑顔、イケメンのバリスタ。いいねいいね。
それから毎日通い、ホテルをチェックアウトした後にも行って、その町とのしばしのお別れを、そのカフェでしみじみと噛みしめました。
何人かのひとから、内田君のいないシャルケには行かないんだろうと聞かれました。Veltins Arena、シャルケの練習場、ゲルゼンキルヒェン、Buer。あの場所から離れるたびに、もう二度と来られないんじゃないかと軽い恐怖におびえて、今までブログにはシャルケやゲルゼンキルヒェン、Veltins Arena、内田篤人選手のことを明確に書けませんでした。
あの場所は世界で一番好きな場所だ。だからまた行けるように、もう一度ここにちゃんと記録しておこうと思います。
Odiba Kaffeerösterei
Goldberglatz 6a
45897 Gelsenkirchen,DE
月ー金 9:00-18:30
土 9:00-16:00
日 休