引越し

台湾のアパート探しで見る「頂樓加蓋=ペントハウス」で暮らす妄想は蜃気楼

台湾のアパート探しでよく見る「頂樓加蓋」とは?

部屋探しのサイトで条件を絞り、ペット可、賃貸料が安く、広くて見晴らしのいい部屋の写真をみつけて「あら素敵!」と思うと、大抵建物の最上階。台湾では「頂樓加蓋」と言われる、屋上に建てつけた部屋です。

これは台北では違法建築になるらしいのだけれど、普通に不動産業者が扱っているし、取り締まりの話も聞いたことがありません。

台北市内の「頂樓加蓋」、ベランダから台北101を眺めることが出来て、それを売り文句にしている部屋が結構ありました。

普段、101になんの思い入れも無く、大晦日のカウントダウンを見に行こうなどとこれっぽっちも考えないで7年台北に暮らしてきました。でも、いざ部屋を探すとなると、悪いところをチェックするのは勿論なんだけど、良いところもやけに強調してみたくなる。

「頂樓加蓋」ペントハウスで暮らす妄想

広いベランダで花火を見ながら、カウントダウンパーティを執り行う自分を妄想してしまうのです。脳内BGMは1980年のアラベスク(Arabesque)のヒット曲「恋のペントハウス(Parties In A Penthouse)」。

飲み物はビール各種と、ベランダでミントを育てて自家製モヒートなんかどうかしら。飲めない友達には美味しいコーヒーやお茶を淹れてあげて、おつまみは何かなー、キッチンも広そうだし、揚げ物とかやっちゃおうかなー。私コロッケ作るたびに自分が天才じゃないかと思うのよねー。近くにピザのデリバリーはあるかしら?野菜スティックのディップはアボカドとか明太子がいいなー。

ヨガマットも買って、毎朝ベランダで自主レッスンもやっちゃおう。植物も色々置くわよ。そんでもって天気のいい日は外にテーブルを出して、コーヒー飲みながら仕事もしちゃうの。毎日がパーティ・イン・ペントハウス!やっだ、素敵やん~台南の某カフェの中庭、こんな感じもいいな~ 

 

「頂樓加蓋」ペントハウスで暮らす現実

それらの妄想は、6階まで階段であがり、擦り剝けた足の皮を見ているうちに、蜃気楼のように遠ざかって行きました。

公寓と呼ばれるエレベーターなしのアパート。コンクリートの壁、階段も趣きがあって、2階にあるカフェに行く時などはわくわくします。でも、自分が住むとなると、夜電気がつくのか、死角はないか、酔っぱらった時や、ヒールのある靴の時、重いスーツケースを持った時、6キロ近い猫をキャリーに入れて動物病院へ連れて行く時どうする。とマイナス面が浮かび上がってきます。3階くらいならまだしも、6階はやはり遠かった。

その部屋は以前、ロシア人が住んでいたそうです。他に一軒見た屋上の部屋も、外国人の先生が住んでいたのだとか。そういえば、ドイツ語のスイス人の先生もそういう部屋にいると言って、台湾人の生徒たちが驚いていたっけ。

「平気だよ、僕は暑いの大好きだから」

とすましていたけれど、スイス人やロシア人がどうして台湾の暑さに耐えられるのかが謎です。異国情緒を楽しんでいたのかもしれないですね。

台湾人の友達に聞くと、100%「暑いし危ない。やめたほうがいい」と止められる「頂樓加蓋」。違法建築、屋上の掘っ立て小屋、とにかく暑いとシビアな感じですが、脳内で「ペントハウス」と言い換えるとアラベスクの3人がくるくると踊りだし、「レッツパーティ!」プシュー、と缶ビールのプルが開く音が聴こえて来るのよね。

ただ、今回見た部屋はお隣の建物と密着しているため、鉄格子が嵌っているとはいえその気になれば跨いで来られる環境。それに、安全確保のためとかで、階段からベランダに通じるドアは鍵をかけてはいけないとのこと。「火事があったら逃げるために」と説明されたけれど、煙と一緒に上に来ちゃ駄目じゃないの。家屋の部分に鍵はかけられても、ベランダが出入り自由なのは困ります。

他にも、ガスや電気などの費用や、郵便受けも5階の大家さんとシェアをすることになると聞いてびっくりしました。確かに、アパートの入り口に6階の郵便受けも呼び鈴も存在していません。小包や書留が来たら、いちいち5階で対応してもらわなければならないのか…。

外から見たら、無いことになっている部屋。

あの眺めと広さは、物凄く後ろ髪惹かれたけれど、毎日の暮らしで肩身の狭い思いや不安を持ち続けたくないので、妄想と現実のはざまで揺れながらも、「ここは無し」と決断。

部屋を見た晩に、大家さんから借り手が決まったと連絡がありました。次の人もやっぱり、外国人だそうです。

 

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mimi
ライター/コーディネーター。 香港から猫を連れて台北へ移住後、30年ぶりに東京暮らし。満喫中。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|