海外在住、長女限定?お雛様問題。
母の住まいに長年置きっぱなしにしていた私の荷物を、去年すべて引き上げました。
引越しや大掃除で出てくる雑誌を読みふけってしまうのは良くあること。押入れの奥にしまっていた段ボールから、授業中に書いて回した複雑な折り方の手紙、中学時代の生徒手帳、卒業アルバム等を発掘してはいちいち手を止めてあれこれ思い出していたので、妹に叱られました。
処分するもの、台北に持ち帰るものの仕訳はそれほど難しくありませんでした。どうしても手元に残したいもの、笑えるし懐かしいけど、もう開いてみることは無いと判断できるものを分けていけばいいだけ。
もうレコードプレイヤーは持っていないし、CDも買い直したけれど、The Black Catsのファーストアルバム「Cream Soda Presents」は持って帰ることにしました。当時原宿のクリームソーダ本店に勤めていたギタリストの片桐孝さんに、お店でサインをいただいたもの。お店もバンドも辞めてしまった後、横浜で偶然会ったのが最後だった。あの時は、それが最後だなんて思いもしませんでした。
お雛様を処分するために調べたこと
片づけをすることを決めてから、私はあらかじめ人形供養について調べていました。実家のある東京に絞っても、引き取ってくれる団体や、供養をしてくれるお寺もあるのですね。でも今は環境問題もあって、やたらと燃やしたりはできないのだそう。
人形供養のためにコンタクトをしたところ
祖母が初節句に贈ってくれた雛人形を、燃やすのか…。
私には甥がいますが、彼に雛人形を譲るわけにもいかず、他の子だって、親や祖父母から贈られたものを持っているはず。地元の商店街では桃の節句近くになるとあちこちでお雛様を飾るので、「雛祭り委員会」に問合せたものの、通常は引き取りはしないけれど、海外へ持っていけないという特殊な事情なら検討するとのこと。でも確実じゃない。限られた滞在時間の中で、きちんと手配するには不安があります。日本を出てから20年以上開けもしなかった雛人形のことを、今更悩んでどうするか。持って帰ったって飾る場所もない。供養に出すしかない。仕方ない。
いざ、雛人形を仕舞った箱を取り出したものの、妹はちょっと怖がっていました。長年日の目を浴びなかった日本人形がどんな状態になっているか、想像もつかないから私だって怖い。いくわよ、いくわよ?とおそるおそる開けてみると、意外なほどきれいな状態で、お雛様たちは眠っていました。
「ちょっと?眩しいわよ、急になんなの?」
とざわざわする声が聞こえてきそうです。
「綺麗だね」妹も安心した様子で覗き込み、どうしても捨てきれずに迷う姉の顔を見て「持って帰れば?」
いやいやいや、でも、そうね。お内裏様とお雛様だけでも・・・
「バンドのメンバーも持って帰れば?」五人囃子のことです。
「お人形だけなら小さいから全部スーツケースに入るんじゃない?」
「小道具も入るんじゃない?」
「ほら入った」
「台湾のお友達に見せてあげなよ。喜ぶかもしれないよ」
妹に嬉しそうに煽られながら私も意を決し、日本から台北にお雛様セットを一式持って帰って来てしまいました。
二十年以上ぶりに日の目を見たと思ったらいきなり飛行機に乗せられて、「何事か」「ひい」「アイヤー」と、お雛様たちもきゃあきゃあ言っていたかもしれないですね。
台湾人女子、お雛様に大興奮
人形と小道具は持って帰って来たものの、ひな壇はない。本棚を一段あけ、とらやの羊羹やKate Spadeの箱を代用してみました。
去年初めて台北で飾ったお雛様を友人たちに見せて、祖母から送られたものであることなどを話すと、彼女たちはとても興奮していました。
「昔のお人形は顔が丸いんだね」
鋭いところを見ています。確かに、バービー人形だけでなく、今時の日本人形は顔がほっそりしているね。昭和ヴィンテージものなんだなあと、台湾で改めて気づかされました。
鋭い見立ての友達は、3月3日になるとメッセージもくれました。
「日本の習慣では、お雛様を出しっぱなしにするとお嫁にいけないんでしょ?早く片づけて!」
私の場合、仕舞いっ放しだったから、お嫁にいけなかったような気もします。