雨続きの冷たい春節があけて数日たっても、まだ寒い台北。温かいお茶の香りは遠くへ連れ出されるみどりの匂い
雨が続いて、湿度が骨にしみる台北の寒さもきっとあと数日か数週間で抜けて、夏の気配がするはず。
仕事始めで爆竹が鳴ったりはしていたけれど、春節で国内の大移動、コロナを警戒してか、お店はがらんとしたところが目につきました。もう数日で、またにぎやかになるかな。
午後に雨があがって、午前中に手入れされた芝生がマスク越しにも良い匂いをさせていました。
周囲を見渡し、四方八方人影がないのを確認してマスクをはずし、深呼吸。
みどりの匂いというものは、なぜこれほど人に良いのでしょうね。
手近にみどりの匂いが欲しい時には、台湾茶を淹れます。この冬は青茶が美味しくて、春節の間も沢山飲みました。
お茶そのものよりも、茶碗や急須の蓋にうつった香り、特に二煎目くらいが大変あまくて良いのです。
お茶をする人から「急須を育てる」と聞いたことがあるけれど、繰り返すお茶の葉が陶器と混ざり合うのかな。
時によっては、海の香りを感じることもあれば、ドイツのサッカー場の芝生の匂いの記憶がよみがえって呆然とすることもあります。
お茶の葉に連れていかれてしまう。魂が旅をする。台湾茶、恐ろしい。
入れたお茶碗を置いたまま、蓋の匂いをかいで「ああ良い香り」とフガフガ言っているのは、はた目から見たら逝っちゃってる状態かもしれません。
台南・振發茶荘のお茶葉、林百貨のアプリを通じて取り寄せました。香港のお茶屋さんで買った紅茶や、日本の友達がブレンドしてくれた紅茶の茶葉は飲んでしまってもうありません。
台中の宮原眼科で見つけたダブルハピネスの茶筒、九份から抱えて来たアップルグリーンのお茶道具。茶碗は台北で。トレイはたしか、ずいぶん前に香港で買ったもの。裕華だったかな。色々なところから集まってきました。
陶器の街・鶯歌老街の小学校の前にある専門店の一角に、お茶を飲めるテーブルもありました。
昨年で営業拠点が替わった、九份にあったお茶と陶芸のお店。ここからの眺めと静けさがとても好きでした。
日本やアメリカ、ヨーロッパから友達が、これまでに何人も台湾に遊びに来てくれました。みんな「台湾のお茶を」と茶芸館へ行きたがるわりに、入ると雰囲気に圧倒されるのか、日ごろの威勢もそがれてもじもじ。「どうすればいいの」「わかんない。あんたやって」とおっかなびっくり、それまでのにぎやかさから一転してお茶を淹れる手順を黙って見守り、大人しくお茶を口にして「おいしい」と別の人みたいに目を見開く様子。観光地やレストランでは現れない穏やかな気配、台湾のお茶の前では誰もが温かく清められるようで、だから茶芸館に連れて行くのが好きなのです。
早くまた、一緒に行ける日が来ると良いです。
台湾茶。高価なものや有名な店が美味しいのではなくて、空気や時間、水と茶葉、淹れる人と飲む人の一期一会なのだと思い知らされる春節でした。
台湾茶に関するコラム
バンコクから届いたマカロンも、台湾茶によく合いました。お菓子とお茶で代理旅。
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