福ちゃんだけ、凶悪な指名手配犯写真のようだった
今日は1129でいい肉、ではなく、イイフクの日だなと気づき、家の猫は福ちゃんという名前なので、イイフクな写真を何枚か撮り、悪いフクの写真と並べてみようと思ってファイルを探してみたら、出るわ出るわ。恐ろしい形相で唸り、牙をむく写真。病院帰りの機嫌の悪い時もあったし、日本から遊びに来た母が「福ちゃんはバカだねー」と話しかけたら怒って「くわぁっ」と顔の半分口を開いた瞬間もありました。
でもこの一枚は格別だと思うの。香港から台湾へ連れてきて、検疫のために台湾大学の動物病院で三週間隔離された時の、証明写真です。
猫たちは一般的な動物病院と同じように、壁一面のゲージの個室に入っていて、それぞれの写真とデータが書かれた札がドアにかかっていました。
台湾大学付属の病院で、隔離検疫三週間の日々
台北桃園空港から検疫官に付き添われて預けに行った時、そういう札を作るとは聴かされなかったし、写真撮りましょうともいわれませんでした。
でも、他の猫たちはみな、その場で飼い主さんに抱っこされて撮影した写真がついています。うちの福ちゃんだけ、隠し撮りのような、指名手配写真状態。
収容された日からギャーと騒いでいたし、抱っこなんてとてもできる状態ではなかったから、隠し撮りで対応してくれたんだな。撮影した人、おっかなびっくりだったのかな・・・とちょっと笑いたいような、泣きたくなるような気がしたのを覚えています。
隔離中は週に一回だけ、面会することができました。事前に予約すると、猫収容所を30分貸し切り状態にしてくれて、いつもはゲージの中にいる猫が、その時だけはドアの外に出て飼い主と遊ぶことが出来るのです。
ガラスの向こうは廊下になっていて、別の部屋に収容されていた大きな犬が、飼い主さんと楽しそうにボール遊びをしていました。
でも福ちゃんは、ゲージのドアを開けても無視。
眼、据わってた。
やっと出てきても福ちゃん機嫌悪かった。とっても機嫌が悪かった。物凄く怒ってた。そりゃそうだよね。いきなり飛行機に乗せられて、なんか聞いたことのない言葉の環境に閉じ込められて、置き去りにされて。
(ババアたまに来てめそめそしやがってなんだコラ。)
というところでしょう。
その三週間、お泊り代は高かったね。二万元近くしたね。
キャリーゲージを持って迎えに行った日、こんな凶暴な猫に根気よく付き合ってくれた担当の先生達が三人、鍵をあけると素早く壁の方へ行き、寄り添ってこちらを見守っていました。初日には、
「凶暴な猫には慣れてますから!」
と眩しい笑顔で受け入れてくれたはずなのに、やっぱりやらかしたんだね色々・・・。
そういう私も内心ちょっとびくびくしながら、キャリーのドアを開けて福ちゃんの入っているゲージに近づくと、癇癪を起して叩かれるかな、という予想を裏切り、福ちゃんは普通の声で「ニャー」と鳴き、おとなしくキャリーの中へ自分で入っていきました。
これには私も、先生たちもびっくり。そしてほっとした。
「家に帰れるってわかっているんですね」
と先生に言われて、その時、本当に一緒に帰れるんだと心から安堵しました。
当時住んでいたアパートに連れて帰り、キャリーのドアを開けると、ふーん?という感じであちこち匂いを嗅ぎまわり、すぐベッドのある方へ行って、慣れた様子で布団の上に乗っていました。台湾で買った布団だから、自分の匂いはついていないはずなのに。
(こいつの匂いがする。ここで寝ていやがる。俺も寝る場所)
とわかったのかな。
台湾大学はただでさえ広くて、真夏は行き倒れになりそうになります。この病院は大学のはずれの方なので、間違っても正門からヤシの木の通りを通って歩いていこうとは思わないでください。
台大の最寄りは公館駅だと思いますが、私はいつも、六張犁からタクシーで行っていました。そして帰りも六張犁まで戻り、駅の近くのPEG Coffeeでコーヒー飲んで、泣いてた。寂しくて。
今日のいい福ちゃん。