異国で暮らす娘より浅田真央を選ぶ母
サッカーのシーズンが終わるので、今月はカップやリーグの決勝やら最終節やらキックオフが台湾時間26時過ぎが続く。試合が終わって興奮状態でいると夜が明ける、翌日仕事だと辛いけれどわりと楽しい。
私の母もテニスの試合を観るために、時々夜中に起きだしていた。
実家にいた頃、というか子供の頃からずっと私はスポーツをやるのも見るのも全く興味がなく自分に関係のない世界だと思っていたので、プロ野球の勝敗をノートにつけたり夜中に起きて海外でのテニスの試合をライブを観たりするのはまだいい。
海外で暮らす娘(私)からの電話を
「浅田真央ちゃんが滑るので、そろそろ失礼します」
と切り上げたりする母には
(うちのママンはどうかしてる)
と笑って見ているしかなかった。
祖母、母から私。「どうかしている」DNAは受け継がれていく
そのどうかしているママンのママン、母方の祖母は戦争中の疎開先で、なけなしのお金を集めて都会から来た芝居を観に行ったらしい。
(今そういう状況じゃないんじゃ?)
と、母も子供心に祖母を呆然と見ていたことを、東京で宝塚を一緒に観に行った時に教えてくれた。
その舞台は、父がお世話になった方の娘さんの、トップスター就任お披露目だった。彼女がフィナーレで一番大きな羽を背負って大階段を下りてくる姿を見て、
「小さい頃、【あたしおばちゃんちの子になる】って家について来たりしたのに、あんなに立派なこと言っちゃって」
母は客席で号泣していた。あれはセリフだから。と暗闇でそっと突っ込んだけれど、母の涙は止まらない。
小さなきっかけが非常に大きな動機になって私もサッカーを見るようになり、ヨーロッパとの時差に苦しみながらも真夜中や朝方に起きだしてテレビの前で正座した母の気持ちがわかるようになった。
結果が決まっていない状態で録画ではなくライブで、試合を見守り、見届けたい。たとえ遠くでも、そこで闘うアスリートと同じ時間を一緒に生きたい。
なんで夜中にわざわざ起きてまで観るの、と母に尋ねたことは無いし、母も特に解説をしてくることはなかった。
でも、ようやく母の気持ちはわかったので、サッカーを観るようになって良かったと思う。
宝塚は夢の空間、舞台を見ている間は、嫌なことや苦しいことは何一つない。
祖母が戦争中に、きっと質素だっただろうお芝居を観に行った事実に私は笑ったけど、絶対に咎めない。
エンターテイメントを楽しむ血筋が祖母から私に受け継がれたことが嬉しかった。どうかしている祖母とママンの、私もどうかしている子孫だなと。
昨日は台北の街のあちこちでカーネーション売りがいた。私は日本の母へネットで花を手配して贈った。母親節快楽!