文化や習慣、考え方が違うから、話し方も異なる
日本で中国語をかじってきた人が台湾や香港で片言をしゃべり、現地の人が苦笑いをしたり凍り付いたする場面が時々あります。私も多分やっているし、香港に数日滞在して戻ると広東語訛りが強くなる(らしい)中国語を、台湾の方に気味悪がられることはしょっちゅうです。
悪気はないけどよくあるケース、回避可能なパターンをまとめてみました。
日本だったら、関西の人に「東京弁きっしょい」と言われたり、関東の人が「関西弁こわぁい」と言う程度のものなので、気軽にお読みください。
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台湾でおはようは「早安」これでつかみはOK
台湾に赴任初日、ローカルスタッフを前に紹介され、挨拶の第一声に
「早上好(ザオシャンハオ)!」
と声を張り上げたにも関わらず反応が薄く、戸惑う日本人を何度か見ました。
台湾人は優しいので、あからさまに怒ったり失笑したりはしませんが、
「ああまたか」
とうっすらした諦めムードが漂い
「一生懸命<中国語>で挨拶しようとしたんだよね」
と好意的にとろうと考えてくれます。
ここで微妙な空気に気づき、
「僕の発音、おかしかった?」
「何か失礼なことを言ってしまったでしょうか」
とそっと誰かに聞く人は、その後現地に溶け込めるタイプ。
「台湾でのおはようは『早安(ザオアン)』なんです。明日から、使ってみてくださいね」
と伝えると、照れたように頭をかいて
「知ったかぶりしちゃった。気を付けます、ありがとうございます!」
と前向きで素直、現地の習慣や言葉を尊重する人を、嫌だと思う人はいないでしょう。駐在期間中も帰任してからも、彼はローカルスタッフに人気があり、よく一緒に食事やハイキングへ出かけていました。
中国語の挨拶で調べたり覚えたりすると、どうしても「早上好」が筆頭にあがります。間違いではありません。でも、ここは台湾。現地の挨拶の仕方を覚えておくと、ぐっと距離が近くなって、生活も楽しくなってきます。
「僕は大学で中国語とってましたから」
「間違ったことは言ってません」
と言ってのけるタイプの人もいました。残念ながら、彼は駐在期間中も心をひらかず、台湾人から声をかけられなかったようです。ちょっと可哀想だなあと思いますが、本人がそれを選んでいるなら仕方ありません。
香港式中国語に台湾人が凍り付くとき
台湾に遊びに来る香港人が、香港式の中国語で話しているのを聴いて
「あっ…」
と凍り付くことがあります。
本当に些細なことだけれど、たとえばお金を払ったり何かをして台湾人が
「謝謝」
と言って、香港人が
「不要謝」「不用謝」
と答えた時など。
その言い方は、だいぶ上からじゃね?と感じるのですが、広東語の言い回しをそのまま中国語にしたものだから、全然悪気はないのはわかります。
でも、台湾的には「謝謝」と言われたら「不會」や「不客氣」が一般的。
不要謝では「礼には及ばない」と上から言っているように聞こえてしまいます。
台湾人にも一瞬顔色を変える人はいますが、いちいち突っかからず受け流しているようです。親しい人に「どう思ったの」と聞いてみると、「ちょっとね。でも気にしないよ」とのこと。傍らで聴いている私だけがどきどきしているようです。
香港で「小姐シャオチェー」はNG?
中国語を少しかじった日本人男性に多いのが、香港のレストランやショップで女性スタッフに対して中国語(いわゆる北京語)の発音で
「小姐 シャオジェー」
と呼び掛けるタイプ。
ほとんどの女性がすっと無表情になり、淡々とした態度になります。
香港で使う広東語でも「小姐シウチェー」はミス、女性を指すことば。でも、中国語で「シャオジェー」と呼ぶと、ある特定の職業の女性に対する呼び方にもなるため、香港女性に対しては使わないほうが無難です。
一番いやだったのは、香港のレストランでパンパンと手を叩いて「シャオジェー!ビール!」とものを言いつけた日本人の男性。香港女性たちは一斉に能面化して硬直、誰も動かず、男性スタッフが代わりにきました。「ごめんなさい」とこっそり言うと、ちょっと肩をすくめてニヒルに笑っていたけれど…。
言葉遣いをたしなめてくれる人のありがたさ
香港は中国なんだから中国語でいいんでしょと、「巻き舌」な「北京語」で「ガンガン」話す日本人もいます。横で聴いている私は脇汗びっしょり。それは台湾でも同じこと。何とも言えない空気感に、「北京語でガンガン」しゃべる人は気づきません。通じているから、目的は達成しているのだけれど…でも、その叩きつけるような話し方はヤメテ…とは言えない。話し方をたしなめるのって、とても勇気がいる。
だから、私が変な話し方や間違った言い回しをした時に、たしなめたり指摘してくれる人がいることを、とてもありがたく思っています。
香港で「中国語が通じない」「英語が通じない」、台湾で「日本語が通じない」とショックを受ける人は少なくありません。
現地には現地の言葉がある。数か国語を使いわける教育を受けた人、現地語でたくましく生きてきた人、様々な情況の中で暮らしをしている人がいることを、あらかじめ心に留めておいてもらえたらいいな。
以前ドイツ語を教えてくれていたスイス人の先生は、私なんかより中国語が上手でした。もともと北京で勉強していたその先生は、大陸風の話し方と台湾の話し方を使い分けていて、本物の語学の達人だと思います。
九龍をクーロンと表記するガイドブックは信用しない
香港にクーロンと言う地名はありません。日本人だけが九龍をクーロンと呼ぶのが定着したのは、ジャッキー・チェンの映画「ポリス・ストーリー2/九龍の眼」に「クーロンズ・アイ」とルビをふられたあたりでしょうか。
「九龍」は広東語ではガウロン、英語表記Kowloonはカオルーン、中国語ならジウロン。「クーロン」という発音は、韓国語のそれに近いと思います。
人に説明するとき、「クーロン・ステイションはどこですか、クーロン・ホテルはどこですかと聞いても現地の人には通じないので、カオルーンと覚えてくださいね」と話しています。
香港観光協会のテキストにも、クーロン城ではなく「九龍城(カオルーン・シティ)」と表記されています。「城」を日本語から直訳して
「クーロン・キャッスルはどこですか」
なんて尋ねようものなら、香港人お得意の
「ハァ?!」
と返され、心がバキッと折れてしまうかもしれない。
そんな理由もあって、香港に関するガイドブックで「クーロン」と表記しているものは信用しません。現地で存在しない読み方、日本語ガイドにしかわからない読み方を広めてどうするんだろうと思うからです。
自分がコーディネートで関わったものにはクーロン記載はしないようにお願いしていますが、たまに出てしまうとがっかりする。私が書いたんじゃないよと大声で言いたいです。
こまけぇことはいいんだよ。でも「親日」に甘えない
「そんな細かいこと言われたら、緊張して何も話せなくなるよー」
と頭をかきむしる人もいるし、気にしないでどんどん喋り、現地の人と楽しそうにしている人もいます。
私としては「シャオジェー+手を叩いてビール」だけは論外。そのほかは、目くじらを立てるほどでもないと思います。
細かいことを気にして黙っているより、コミュニケーションをしたほうが旅は楽しいもの。観光客や一時的に滞在する人たちの「話したい」「伝えたい」「聞きたい」熱意に対して、台湾も香港も、寛容だと思うからです。
ただ、これがビジネスになると「言葉も出来ないのに何をしに来た?」と言葉や態度で示されることがあります。旅行の時は「優しくて日本語が上手」な台湾人に多く出会えても、ビジネスの場では、日本語を話せる人のほうが希少です。
コミュニケーションを長く取れるなら誤解を解くチャンスはある。でも、一瞬の出会いなら、ちょっと気を付けてみるヒントになれば幸いです。「きっしょい」「こわぁい」と言い合える仲になれたら、なおよし。「日本人は好かれている」「親日なんだよね」と胡坐をかかず、通じたいと願って行動する気持ちが一番大切。
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