中国の情報規制が発端で、ブログと画像をWeiboに無断流用された話です。
私が書いたブログが中国版ツイッターといわれる「ウェイボー(微博)」のあるサイト上に無断で転用されました。内容が簡体中国語に翻訳され、私が撮った画像にはウォーターマーク、ご丁寧にそのサイトの著作権がつけられているのを見た時は、ちょっと呆然としたかな。
文章の翻訳までは(情報統制されて直接アクセスできないのだろう、しょうがないか…)と目をつむったかもしれない。でも、画像も持っていかれたうえに「うちのもの」とそのウェイボー内のサイト名で印をつけられていたので、「これを見過ごしてはいけない」と決めた。情けはかけませんでした。
流用したのは、日本に住む中国出身の女性。彼女とのやりとりを通じて、考えたことを書いておきます。
Contents
よりによって、中国版ツイッター「ウェイボー」に
異変に気づいたのはアクセス解析ページのリファラから。これは、「どのリンク先からブログを閲覧してくれているのか」を確認できるシステムです。ある日「ウェイボー」からのアクセスがあり、不審に思って遡ってみました。
その時、私はウェイボーのアカウントを持っておらず、仕事でちらっと見るくらいだから、あちら側との交流もゼロ。誰かがリンクでも貼ったんだろうか…と該当ページを見てみると、私が撮影・掲載した画像に見知らぬサイト名で著作権を主張するWatermarkをつけ、コラムも簡体中国語に翻訳して掲載したいたのです。
これは一体。
びっくりして、対応を考えはじめました。
ウェイボーのページ主に連絡をしてみると…
ウェイボーのページには、「通報=挙報」のボタンがあります。盗用や不適切な内容を通報するシステムですが、これはウェイボーのアカウントを持っていないと使えないようです。まずはこちらで作ったアカウントで、作成主に私信を送りました。
「こんにちは、わたしはmimiといいます」
「こんにちは!わたしの翻訳、どこか問題ありますか!?」
すぐに返事が来ました。
相手は自分が流用したコラムの作者を認識していて、翻訳した自覚もあったのです。
そして、彼女の気がかりは「自分の日本語から中国語への翻訳が正しいかどうか」。
問題はそこじゃない。
私が苦情のために連絡してくるとは、夢にも思わなかった様子。話が通じない恐れはあるけれど、伝えなければ何も始まりません。
「私の書いたコラムのコピーや画像の流用はお断りしています。すぐに記事を削除してくださいね」
「盗用」などの単語は使わず、あまりきつくならないよう、簡潔な中国語で送ったところ、長い返事が来ました。
「中国では情報が得られない」初めて聴く、情報規制や隠ぺいの下にいる当事者の声と行動
日本に住んでいる中国人である彼女からのメッセージを要約すると
中国では、ツイッターや情報サイト、日本や台湾、香港の情報へのアクセスに制限があり、好きなコンテンツに関する情報も知る方法がない。
あなたの書いた情報を中国のみんなとシェアして、教えてあげたかった。
決して内容を剽窃したわけではない。
オリジナルとして、あなたのサイトもリンクしている。
中国ではインターネットのアクセスに制限があると聞きます。
でも、私が今まで聞いてきたのは、遮断される不便さを訴える「日本人の声」ばかりでした。
今回初めて、その国の人のリアルな声をきいたのです。
私たちがいつもしている「検索」からのアクセス、または「流れてきたリンク」をクリックして見る「情報」、それが中国では制限されている。「もっと知りたいこと」の情報に、辿り着けずにいる現実。
私たちが旅先でWi-fiが繋がらず呆然となっても、必ず解決の糸口は見えます。でも、彼女たちにはWi-fi以前の問題、それよりももっと高い壁と深い溝がある。壁と溝の向こうに、知りたい「情報」が存在しているのも知っている。そのことについては、同情しました。
けれども、今回私が彼女に伝えたかったのは、別の問題です。
「状況は理解しました。私が問題にしているのは、あなたは私が調べて書いたものを無断でコピーしたこと、私が撮影した画像にあなたのサイトのタイトルでウォーターマークまでつけて、自分のモノのように表示したことです。リンクをしたと言っても、私のサイトのタイトルや引用元、作者名の表記もしていませんね。
私は原則としてブログの内容や画像の転載や流用を許可していません。全て削除してください」
「そんなつもりではなかった」「知りたい情報を仲間に教えてあげたかった」彼女に対して、厳しい言葉になってしまったかもしれません。でも、これ以上でもこれ以下でもない真実を伝え、結果としてすぐにページごと削除されました。
クリック一つで罪悪感なし。パクリに国民性は関係ない
Wi-fiが繋がらないから、他人に無許可でただ乗りする。
ガイドブックは高いから、書店で欲しい情報ページだけこっそりスマホで撮る。
他人が書いた絵をコピーして、自分の名前で提出する。
人のブログや画像を勝手に持っていき「自分のもの」として掲載するのもそれと同じことだと、伝わるだろうか。
クリックで簡単にコピーができてしまうから、罪悪感も薄いんだろうか。
これらのことは日本でもうんざりするほど行われているから、どこの国民性とは言えません。目的や目先の娯楽、情報、刺激的なことに夢中になって後先も周りも考えない人は、台湾にだっていやというほどいるよ。先に並んでいる人も、作った人のことも見えなくなって「自分のものにする」のは国民性ではない。育ちでも学歴でもキャリアでもない。個人が学んだ品性の問題だと私は思っています。
私のブログを右クリックやコピーができない設定にしたのは、この件がきっかけでした。
台湾の方が中国語で書いている、レストランや旅行情報ブログの多くは、コピーガードを導入しています。これは中国語圏内でパクリパクられを未然に防ぐためだろうと、今回のことで気が付きました。コピーガードは万能ではないし、画像を盗って行く方法も、他にいくらでもあるけれど。
情けはかけない。たったひとりにでも、理由をきちんと伝えたかったから。
少なくともウェイボーの彼女は、私が日本語で書いたものを自力で中国語に翻訳した。その労力はあっぱれだから、酷なことをしてしまったのではないかと考えました。そうまでして「祖国にいる同志が知りたがっている情報をシェア」したかったのかと。私のページを見つけた時、「これを仲間に伝えてあげよう」と、彼女は嬉しかったかもしれない。知りたい情報や好きなものが台湾や香港にあるのに、ルートは遮断されている。だから日本を中継して、翻訳までしてウェイボーに載せて中国内に届けた。あなた優しいね、と声をかけたくもなりました。
でも、画像をダウンロードして、自分のところのコピーライトマークまでつけて自前のフリをしたのは、やっぱり駄目だ。これはいくらなんでも質が悪い。見逃すことはできません。
遮断された世界の外にあるものを届けようとした彼女の行動は理解できる、でも、ルールを踏み外したことに情けはかけない。彼女に、中国で生まれて日本で暮らすひとりの女の子、たったひとりにだけでも、それはルール違反だと伝わることを願っています。そして、せっかく今は自由に情報を得られる環境にいるのなら、自分で正しく情報を集め、自力でコンテンツを作ったらいいと思う。自分で作ったものに自分の名前をつける喜びを知れば、人が作ったものに対しても、尊重する気持ちが生まれるかもしれないから。
2020年2月15日追記
この時無断流用されたコンテンツは「娯楽」や「嗜好品」に関する内容で、命や人道に関わる情報ではありません。
現在、新型コロナウイルスに関する情報はニュースなどの報道だけでなく、SNSでも活発に発信されています。
信頼に値する有益な情報だと判断したら、良く読みこんでから慎重にシェアをする。他人様の情報や画像、得たものや言葉を、自分のもののように発信しない。緊急事ではあるけれど、一旦おいて良しと思えてから素早く伝える落ち着きを、忘れずにいたいと思います。
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