台北生活の日記

佳徳のチーズケーキと人形町のほうじ茶で、ロスとシックを慰める週末。

 

久しぶりに「佳徳」の前を通りかかり、足を止めてガラス越しに中をのぞいてみた。
台北の佳徳は、パイナップルケーキと真っ赤なショッピングバッグが有名なお店。
旅行が当たり前だった日々には、日本や香港、韓国からも旅行者が買いに来ていて、入場制限をかけた店の前には小さな行列がよくできていた。
中秋節には台湾の人たちが開店前から並び、行列の最後尾は角を曲がって見えないところまで延びるほど。店の前の不法駐車も頻繁で、警察が来るのを何度か見たこともある。

観光客とともに、行列も消えていた。
それでも、がらんとしているわけではなく、台湾の人たちが次々と店の中へ入っていく。皆さん、何を買うのかな。興味をひかれて、私も中へ入ってみた。
店内では、商品の種類自体は変わらないけれど、陳列棚が1か所空いていた。行列の分、生産量を減らしたのかもしれない。週末を前にしていたからか、お菓子をトレイに山積みにしていく人たちが結構いる。台北の有名店のものを、中部や東部、南部への帰省みやげにするのかな。

チーズケーキを買ってみた。カステラのようにカットされているから、食べやすそうだ。甘いものが少しだけ欲しい時に、きっと良い。カードやアプリ決済のレジはちょっとした行列で、空いていた現金払い専用レジに呼びこまれる。いくつかあるレジが全て稼働するほど買い物をする人たちがいる。誰かのために、お菓子を買う人たち。この様子を見ただけでも、店内に入って良かったと思う。

チーズケーキは小さなパックだから、紐の取っ手がついた赤いショッピングバッグではなく、プレーンな紙袋に入れて渡される。家に戻ってよく見ると、佳徳のロゴ入りシールが貼られていた。真っ赤に目立つパッケージもアピール力があっていいけど、小さいところで見えるブランドの力や誇りも良い。

チーズケーキは冷蔵庫で冷やし、熱いほうじ茶とともに食べた。
冬に東京へ行った時、人形町の森乃園で買ったほうじ茶。ストックは残り1パック。無くなる頃にはまた日本へ行けるだろうと、新型コロナウイルスに危機感を持ちながらも、あの時はまだ、高を括っていたな。こんなに長期に旅行が規制されるとは、思っていなかった。

日本で「台湾ロス」、台湾や香港では日本を恋しがって「ホームシック」など、切ない気持ちを言葉遊びで紛らわしているのを見かける。言葉で表明せず黙って内側にためている人は、もっと多いと思う。
どちらにしても、生きていかなくては。
私はSARSの収束を、デンパサールから香港へ戻る機内アナウンスで聞いた。アナウンスを聞いた乗客が一斉にマスクを外し、安堵のため息をついたあの瞬間を忘れない。だから新型コロナウイルスの収束をどこでどんな風に聞くのか、楽しみにしている。どこでどんな風に祝うのか、ものすごく楽しみにしている。

佳徳のチーズケーキはメレンゲのようにふわふわと、甘く、あとに酸味が残る。森乃園のほうじ茶は濃く出してもまろやかだった。茶杯は香港の朗廷酒店で誰かと待ち合わせまで、少し時間が会った時にのぞいたショップで見つけたもの。柿のような色と「福」の文字が一目で気に入り買った。あの時お店に漂っていたジンジャーリリーは良い香りだった。バリ島であれこれ買い込んだ、茶托やトレイ。会いたいとかちょっと出かけたい、あの街の空が見たいあれが食べたいこれを聴きたいと思い立ってすぐに飛べた日々、行こうと思えば行けた日々が懐かしい。いつその日を取り戻せるのかわからない。

甘いものは慰めに、熱いお茶は平常心を保つのにとても良い。夏の午後に、一息つきましょう。また会える日まで、必ず生きていきましょう。

 

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mimi
ライター/コーディネーター。 香港から猫を連れて台北へ移住後、30年ぶりに東京暮らし。満喫中。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|