台北生活の日記

席の譲り方は、香港や台湾のひとたちが身をもって教えてくれた

日本へ一時帰国、東京メトロやJR、京浜急行などを乗り回してあちこちでかけた。春節前といっても、東京では台湾や香港からの旅行者とあちこちですれ違う。

東銀座へ向かう地下鉄の空いたシートに座っていたら、高齢女性をふくむ家族連れが乗り込んできた。他に空いている席はなし、誰も立つ気配なし。

ドア近くに立って車内を眺めているその高齢女性にアイコンタクトして中腰になり手でシートを勧めると、女性と、一緒にいた娘さんらしき方がぱっと笑顔になってこちらに来てくれた。女性は私に「謝謝」と、娘さんは「Thank you」と言い、それからふたりは広東語で話しはじめた。

香港人だったのかーと不思議な気持ちになる。でも腑に落ちた。アイコンタクトからの素早い反応、動き方は、香港人のものだ。そして、日本人に伝わりやすい言葉でお礼を言ってくれたのだろう。「日本人は親切だ」と広東語で話す声が、後ろから聴こえた。

私が乗り物の中で、必要とするひとに席を譲る咄嗟の判断と動き方を身に着けたのは、香港の生活の中でのこと。特に印象に残っているのは、シートにどかっと座り、携帯電話で強い口調で話していた全身刺青のお兄さん。高齢の男性が乗り込んでくると、彼はしゃべり続けながら腰をあげ、男性のほうへ移動して手を取り、転ばないようゆっくりと自分がいた席に座らせて、自分は閉じたドアにもたれるように立った。その間も、携帯で話す強い声は途切れない。高齢の男性が何度もお礼を言っても、手をひらひらさせて応じただけ。電話の相手は、まさかお兄さんが喋りながらそんな動作をしているとは思いもしなかっただろう。

高齢者や妊娠中の女性、ケガをしている人にさっと席を譲る身のこなし、お礼を言わせないクールさ。香港の人たちの粋な振る舞いをカッコイイと感じて、あんなふうに私もしてみたいと思い、真似するようになった。香港の人たちが、身をもって教えてくれたのだと思っている。

でも、日本の家族や友達に言わせると、私の席の譲り方は突然で素早すぎ、素っ気ないらしい。譲るべき相手がいることに気づかなかったとも言われる。言い訳をするのではなく、純粋に「なんでそんなに早く見つけられるの?」と驚かれる。

台湾での暮らしで、公共の乗り物に乗り、次の停車が近づくと「譲るべき相手が乗り込んでくるかも?」となんとなく気にして席を立つスタンバイする台湾の人たちの気配を真似していたから、気づくのが早くなったのかもしれない。

日本人は親切だと言った女性に
「あなたたちが教えてくれたんですよ」
と伝えたかった。でも家族旅行にいきなり割って入るのも無粋なことだし、やめておいた。東銀座で地下鉄を降りて、歌舞伎座へ。

一幕だけの幕見だけど、楽しかった。今度はゆっくり観たいです。中村長三郎君の可愛らしいことったら。

 

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mimi
台北在住のライター/コーディネーター。 長年暮らした香港から、猫を連れて台北へ移住しました。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|