台北生活の日記

「愚かなのはお前なんだ」と念をおす、香港人のやり方。

昨夜は遅くまで、香港の区議選挙速報を見ていた。
フォローしているFacebookのアカウントに、当落が次々と表示される。

ある候補者の落選が確定すると、文字通り「祭り」が始まった。一報が入って数十分後、その候補者だった人物のFacebookアカウントを見てみると、落選について本人からの報告がすでに投稿されている。いいねやコメント数はもう数万件つき、伸び方が異常だった。

8月21日に起きた、元朗の市民に対する無差別襲撃事件。警察に通報したくてもつながらず、警察署の門は閉じられている。誰も取り締まりに現れず、現場は文字通り、無法地帯になっていた。

元候補者は、その事件の実行犯とみられる集団に「おつかれ、よくやった」と声をかけ手を叩き、握手の手を差し伸べる様子を撮られ、動画はあっというまに拡散。「集団」と親し気に食事をともにする写真まで出てきた。

事件後も、その元候補者が欧米人の夫をもつ女性議員やSNSで自首を勧める女子大生に対し、下種の極みな言葉を浴びせている様が記録されている。

元候補者の落選を祝ってシャンパンボトルをふり、盛大に泡をまき散らして祝う人たちの様子が流れた。(日本でも「民主派の当選を祝うひとたち」とさらっとしたキャプションで配信されている)

彼のFacebookのコメント欄には

 

「おめでとう」
「おつかれさま、本業に専念して」
「どうぞ安らかに」

など、およそ落選者に対する言葉とはかけ離れた、おちょくる内容がずらりと並ぶ。古い香港映画から「おめでとう以外の言葉が思いつかない」「シャンパン開けてお祝いだ」などのセリフ字幕の場面を切り取って、いくつも貼られた。

 

脇があまかったり、説明が曖昧だった時、香港人の男性から、強く指摘されることがあった。「お前が愚かだったんだ。こっちは悪くない。よく覚えておけ」と言わんばかりに、念を押すように、大声で、時には人差し指でこちらの鼻先を指しながら。

たとえば、空港でお客様が迷子になってしまったから探してきてと指示を出しても、手ぶらで戻って「A出口にいなかった」と言う。「B出口は?」と聞くと

「だってあなた、B出口を探せとは言いませんでしたよね?」

大声で、目に力をこめ、私のミスだとすり替える。お前が愚かだからだと念をおすこのものの言い方。俺の間違いじゃない、お前が悪いんだというすり替え力。あー香港人香港人。

絶対にミスを認めないのは、謝ったら、小さくて不安定な立ち位置を失ってしまからだろうか。だから絶対謝らない。そんな積み重ねが香港ではいくつも層をなし、私は香港人の男性にものを頼む時、隙が無いよう、裏の裏まで読みながら話す癖がついた。ちょうどこの元候補者と同じ年代になっているだろうな、あの人もこの人も、「愚かなのはお前だ」と念を押してきた、ちょっと前の世代の香港人の男性たち。

元候補者を煽っている人たちを見て、何となくそのことを思い出した。

愚かなのはお前だ。

威張り腐って下品なことばかり言ううさん臭い男。もしかしたら、襲撃事件を裏で操っていたかもしれない人物。どの面をさげて区議に立候補した?ざまをみろ。

救いだったのは、(本人と陣営には不愉快だろうけれど)元候補者に対するコメントが、ユーモアと機知にあふれていたこと。罪や間違いを捏造するのではなく「さようなら!」を何度も何度も、手を変え品を替え伝えていたこと。私は大爆笑しました。あの切れ味のあるブラックな「さようなら」「おめでとう」、本人は腹立つだろうなあ!

明日からまた、笑ってばかりもいられなくなるかもしれない。でも、祭りは祭り。おめでたいことは賑やかに祝い、皮肉たっぷりに香港映画のセリフや広東語ヒット曲のフレーズを使って煽るのは、香港ならではの、たまらなく香港ならではの、愛すべき、愛しい文化だから。

 

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mimi
台北在住のライター/コーディネーター。 長年暮らした香港から、猫を連れて台北へ移住しました。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|