お昼時に萬華駅の近くを歩いていたら、通りに面した作業場のような場所で、家族がお昼ご飯を食べ始める様子が見えた。
一家で商売をしているのか、ドアを開け放ち、仕事道具が積まれている空間。おじいさんとおばあさん、お父さんと十代後半の男の子と女の子が、お皿が沢山並んだ円卓を囲んでいる。お母さんが円卓の真ん中に大きな鍋を置いて何か言うと、男の子と女の子が鍋を覗き込み、声は聴こえなかったけれど、まるで「わあ」と喜んでいるような笑顔になっていた。
私は歩調を不自然ではない程度にゆるめて、その空間の前を通り過ぎる間の一瞬を、記憶に残す。「お食事中にすみません。あなた達ご家族の様子があんまり素敵だから、写真に撮らせてもらえませんか」と声をかけたい衝動は飲み込む。
あんなに沢山のおかず、家族に食べさせる料理を作るのは大変だろうな。こざっぱりしたTシャツを着た、もうだいぶ大きい子供たちが料理を覗き込んで嬉しそうにしていたのは、夏休みで台北に帰って、久しぶりの団らんだったのかしら。あんなに喜ばれたら、料理を作るのも張り合いがあって嬉しいだろうな。ほんの一瞬、通りすがりに垣間見ただけの食卓の風景、普通の日常の幸せ。平和で、元気で、誰かが誰かのために力を尽くしているから叶うことだと改めて思った、台北のお昼時。
当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用、まとめサイトへの転載も固くお断りします。
Unauthorized copying and replication of the contents of this site, text and images are strictly prohibited.
本站內所有图文请勿转载.未经许可不得转载使用,违者必究.