香港あるある

京都をキヨト、九龍がクーロン。大事なのは相手に伝わること

「九龍をクーロンと言うのがどうしてそんなに気持ち悪いの?」尋ねられて考えた。大事なのは相手に伝わること、言いやすく覚えやすいこと。

 

地名を現地語の発音で正しく言うのは、外国人には難しい。
「日本が大好き、京都へ何度でも行きたい」
と言う外国人が、「KYOTO」を「キヨト」と発音するのをよく耳にします。
ローマ字表記をどう読むか、そもそも「きょ」という発音に慣れていない場合もあるでしょう。でも東京を「トキオ」と読むのは80年代くらいまでかな。今は「トウキョウ」と言う人が多いように感じます。

ところで香港の「九龍」。英語でKowloon、広東語はガウロンなのに、なぜ日本では「クーロン」が定着してしまったのでしょうか。

九龍=カオルーンを「クーロン」とよぶ呆気ない理由

九龍=カオルーンを日本では「クーロン」と呼ぶのが定着した理由には諸説あるようですが、いずれも1960年代や70年代のエピソードでした。私が意識したのは1988年の香港映画「警察故事續集 ポリスストーリー2」。「九龍の眼/クーロンズ・アイ」とついた邦題が、日本に九龍=クーロンと定着させる大きな影響を及ぼしたと思っています。
そうはいっても、日本人向けの真っ当なガイドブックや政府観光局では「カオルーン」表記を徹底しているのに、なぜこうも「クーロン」なのか。

「クーロン城へ行ってみたい」「クーロン・サイドに泊まる」と聞くたびに気持ち悪がる私に友達は困惑して
「でも日本人にはカオルーンって、言いにくいよ」
と言いました。

 

言いにくいのか!
特に深い理由、誰かの陰謀、そんな複雑なものではなくて、単に「カオルーンは言いにくい。クーロンのほうが言いやすい」
呆気ないほどシンプルな理由だったのか……

そう腑に落ちてからは、全然悪気の無いひとに対して
「クーロンなんて発音は広東語でも國語でもないし、香港にクーロンなどと言う場所は無いのに。気持ち悪いわー」
と気持ちがいきり立たないように気を付けています。そもそも、「クーロン」という発音を気持ち悪いと感じるのは、私の個人的な好悪、あまり理解されない思い入れでした。

 

餃子はギヨザ。相手に「伝わる」ことが大事

話している相手に「なに」や「どこ」を、正確に伝えるのが大事。
ドイツ語を教えてくれた日本人の先生の一言も、考え方を変える大きなきっかけになりました。

「たとえば、餃子をギヨザと言うのは日本人には抵抗があるかもしれません。でも、ドイツ人とドイツ語で話すなら、GYOZAをギヨザと発音したほうが、いきなり日本語のネイティブな発音で言うより、餃子と伝わりやすい場合がある。
大切なのは、相手に通じることです」

日本語の発音を敢えてヨコ文字っぽく言うのはこそばゆい。そんなテレよりも、相手に通じるように話す気遣いを優先するべきなのだと教えてもらいました。
そういえば、ドイツ語では台北をTaipehと表記することがあります。
なぜタイペーなのかわからないけど、ドイツの発音ではそのほうが通じやすいのでしょう。
「台北はTaipei!たいほくでもタイペーでもありません。正しく発音してくださいッ」
と癇癪を起こすのは詮無いこと、「現地で通じるならいいじゃん」となります。

香港のツアーガイドも、日本人旅行者に日本語で案内する時「クーロン」と言っていました。「日本人にはそれで九龍と通じるから」と。

 

「九龍をクーロンというのが、なんでそんなに気持ち悪いの?」

「九龍をクーロンというのが、なんでそんなに気持ち悪いの?」
単純に興味を持って、質問してくれた友達がいました。
本当に、なんでだろうねえ。発音が生理的に無理、なんかダメ、間違いが幅を利かせているのもいらっとくる。そんな言い草では
「アタクシは現地事情も正しい発音も知っている!無知の民よ、直してやるから良くお聞き!」
頼まれもしないのに斜め上のバルコニーによじ登り、人を見下ろして叫んでいるいかれた人。直すというより、首をはねておしまいと成敗したがっているスペードの女王ようです。

でも、どのくらい気持ち悪いと感じるかだけは伝えようかと思い
「エセ関西弁を聞いたときの、妙ちきりんな、こそばゆい感じなのよ」
と説明すると
「ああー!そういう感じなの!」

「非関西人」がしゃべる「エセ関西弁」を聞いて、耳の中がふるっと震えて背中が総毛だつ、考える前に感じてしまうあの感じ。関西の人が関東風にしゃべれると主張してから、ぎこちなく「なんとかじゃん?」と言う時の、可愛らしさや愉快な感じとは全然違う。エセ関西弁を聞いて能面になる人たちの表情、何かを我慢している気配。これは、私が九龍を「クーロン」と呼ぶのを聞いた時の顔と、同じかもしれない…。

「その感覚はわかる。でも、自分はクーロンと聞いても特に何とも思わないから、まあ同情しとく」。あっさり笑われてしまいました。

台湾で、日本人に「カオルーン」は浸透しないと悟る

私個人では、香港にいた頃、日本人から「クーロン」と聞くたびに地道に訂正をしてきました。「気持ち悪い」という個人的な感情は別にして、正しい名称を覚えておいた方が、万が一の時に問題を回避できると考えたからです。
たとえば九龍酒店の宿泊を
「クーロンホテルに泊まっています」
と言われたら、嫌みにならないように気を付けながらやんわりと
「カオルーンホテルですね」
と返せば
「はい、カオルーンホテルです」
と答えてくれる人がほとんどでした。
「クーロンホテル」と言っても現地語では通じないから、もしもの時のために、なんとなくでもいい、記憶にとどめておいてもらえたら…と思ってのことです。それでも、現地の読み方で返すのは、嫌みかな…数日滞在するだけの方には、余計なお世話かな…と考えたりしていました。

でも、台北に移り住んでから、いちいち訂正するのは詮無いことだと思い知りました。台湾で暮らす日本人の友達も知り合いも全員、九龍を國語読みの「ジウロン」もしくは「クーロン」と発音するからです。

広東語と台湾の中国語、発音の違いはあっても、中国語を話す人にも「カオルーン」は覚えにくく、言いにくい。日本人同士なら、九龍はクーロンで通じる。この先も、日本で日本人にカオルーンが浸透することはないだろうと、台湾に来て悟ったのです。

 

楽しく飲んでいるときに「本場ではBeerをビールとは発音しないし、通じませんよ?気持ち悪い」なんていう人がいたら、「どうした?飲み足りてないのか」と心配になるよね。

話している相手に通じるよう、言いやすく、覚えやすい言葉で伝える。それが一番大切なのだと、香港から台湾に来て数年たって、気持ちが落ち着いたところです。

 

 

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mimi
台北在住のライター/コーディネーター。 長年暮らした香港から、猫を連れて台北へ移住しました。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|