30年ぶりの東京生活

海外から4年ぶりに東京へ来る友達と、どこで何を食べればいいの?

友達がバンコクから4年ぶりに東京へ来る。喜び勇んで「何食べたい、どこ行きたい」とたずねると「日本人が一緒に行かないと注文できない店」。それっていったい、どこの何。

 

今どきそんなところが、日本の東京にあるのかな?
この頃は飲食店のメニュー、たいていどこでも画像つき。日本に何度も来ていて和食を食べなれている人なら、画像さえあればどういう食材と調理法なのかも想像がつくんじゃなかろうか。
なんでもかんでもタッチパネルで、ネットの海に情報はあふれかえっている。せっかくコロナ明けの旅行解禁なのに、私ら日本人が案内する出番はあるのかな?と首をひねってしまいました。

「そうなんだよ、もう、東京あたりどころか日本中、大抵の場所は知られている。どこの店もGoogleの評価に外国人のコメントがついて、外国人がいない場所なんかないだろうね。だから尚更、みんなが知らないところでよくわからないものを食べたいんだよ」

 

そんな友達のリクエストを聞いて頭を抱えて悩み、東京育ちの友人たちにも相談して結局、日本橋の寿司屋でカウンターの予約をしました。
コロナの前、その友達は東京から台北にいた私に電話をかけてきてたずねました。
「お寿司屋さんに来たんだけど、寿司は箸で食べるの、それとも手で食べるのが礼儀正しいの?」。
郷に入れば郷に従えで、友人は日本の寿司屋で失礼のない食べ方をしたいと、わざわざ聞いてきたのです。私は笑ってしまって「箸でも指でも、好きなように食べていいんだよ。でも、醤油はつけすぎないでね」
香港や台北に遊びに来てくれた日本の友人たちや仕事関係者に
「このお皿は使ってもいいの」
「全部食べるのは失礼なの、少し残した方がいいの」
生真面目にたずねられ、やっぱり笑ってしまったことを思い出しました。形式ばった店でもないのに、異国の地で失礼のないようにと緊張している人達のいじらしさが可愛くて。そのたびに「好きなように食べていいのよ、美味しいならたくさん、全部食べていいのよ」と答えたものでした。

4年ぶりに東京へ来る友人は、新宿・渋谷、麻布に銀座、六本木あたりは私よりも詳しいけれど、「日本橋は行ったことない」のだそう。良かった良かった。

そして約束の二日前、スマホにメッセージの着信があり。内容を見る前に(人数が増えるんじゃないかな)と予感がして確認をしてみたらビンゴ。友人と私との予定を聞きつけた共通の友達が香港からジョインしたくなって、さっき航空券を予約したとのこと。
すぐにお店に電話をかけて、もうひと席増やしてくださいとお願いしました。

2022年の9月に台北から東京へ拠点を移してから、私はなにかというと日本橋で遊ぶようになりました。昔からの友人たちとの食事や買い物、集合するのも日本橋はアクセスしやすい。渋谷や新宿のようにすくみ上るほどの人混みはなく、ゆるぎなく美味しい店がある。でも、日本人の私が東京に帰って来て楽しいと感じるのと、外国人の友人たちが遊びに来て楽しいと感じる要素は、違うかもしれない。

香港で暮らしていた頃や台北に移ってからも、日本から来る人の案内は、それほど悩みませんでした。現地に暮らす日本人が美味しいと思う店に一緒に行くのが、相手にとっても一番望ましいことだから。
でも、外国人だと勝手が違います。忍者が出てくるようなエキゾチックジャパンな店がいいのか。香港や台湾でも大人気になったドラマ「深夜食堂」に出てくるような、常連がメニューにないものを頼むような店がいいのか。

友人たちは、築地や豊洲の市場のことを、日本人の私よりもよく知っています。でも、日本橋には関東大震災で焼けてしまうまで市場があったとお寿司屋の大将が教えてくれる話を広東語にして伝えると、友人たちは意外そうに耳を傾けてくれました。市場、地震。そういったキーワードは、もしかしたら香港やバンコクから来た彼らにとって、いかにも日本的なことなのかもしれません。夜にランプがついた日本橋の麒麟の像、香港にも昔からある三越サームユッの本店。呉服屋から始まった日本で最初の百貨店なのだと話しながら見ると、神田祭の提灯がずらりと並んでお江戸情緒。コロナ明けで4年ぶりのお祭り、そうか、そうなんだねと4年ぶりに東京へ来た友人たちは、神妙な面持ちで百貨店の灯りを眺めていました。

どこへ案内しよう、何をすれば喜ばれるか、考えすぎてもしょうがない。
どこから誰が来ようと、自分の好きな街へ、好きなお店に連れていけばいいのよね。
美味しいものを、リラックスして楽しく食べて、おしゃべりできればいい。久しぶりに会えるのだから。楽しかったです。

 

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mimi
ライター/コーディネーター。 香港から猫を連れて台北へ移住後、30年ぶりに東京暮らし。満喫中。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|