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香港版おっさんずラブ「大叔的愛」こんなに笑ったの久しぶり。広東語と香港の風景との親和性が抜群だった。
香港

香港版おっさんずラブ「大叔的愛」こんなに笑ったの久しぶり。広東語と香港の風景との親和性が抜群だった。

香港のことで、こんなに笑ったのは久しぶり。
日本の人気ドラマ「おっさんずラブ」香港リメイク版は放送が始まると大きな話題になり、出演者の人気も大爆発。香港初のBLドラマ、セリフが大流行しカミングアウトのきっかけになるなど、社会現象状態に。広東語と香港の風景、おっさんずラブとの親和性抜群でした。

 

 

私はもともと日本のオリジナル版「おっさんずラブ」が大好きで、好きすぎるあまり広東語吹替え版も探し出して見ていました。日本語オリジナルではああだったのが広東語ではこうなるのかと大笑いした挙句に香港の匿名掲示板までチェックしにいき、広東語で書かれた香港の人たちの感想を見て爆笑したり…
日本版の香港展開時から、
(広東語とおっさんずラブの親和性、素晴らしいな)
と感じていました。
劇場版では香港ロケも行われ、おっさんずラブと香港って縁があるのかしらと思っていたけれど、まさかのリメイク版作成、それが香港で社会現象にまでなるとは。
台湾ではLINE TVで香港と同時配信され、2021年秋には日本でも配信される予定の香港版おっさんずラブ「大叔的愛」。香港版ならではの魅力や日本版との違いをピックアップしてみました。
こちらが香港版のビジュアル。日本版をご覧の方なら、誰がどの役柄かピンときますね。

香港版おっさんずラブ「大叔的愛」、登場人物の名前や呼び方

香港版おっさんずラブ「大叔的愛」製作はViuTV。
春田”はるたん”創一にあたる「田一雄」と牧凌太「凌少牧」を香港の人気グループMirrorのEdan Lui 呂爵安とAnson Lo 盧瀚霆、”部長”黒沢武蔵「KK」はベテランの黄德斌が演じました。
日本版では部長が「はるたん」とした可愛い呼び方は「田田(Tin Tin)」に。他の登場人物は、阿牧も含め「阿田(Ah Tin)」と呼びます。「阿牧(Ah Muk)」も同様で、「牧くん」や「まきまきまきまき」といった呼び方はなし。みんな「阿牧」と呼んでいました。「牧くん」や「春田さん」といったくんづけ、さんづけで先輩後輩の関係を表す概念が、香港版にはありません。

はるたんを「春春」ではなく「田田」にした理由の推察

香港版で名前を「春」ではなく「田」にしたのは、広東語や中国語で「春」は性的な要素を表す単語が多いこと、「春」の発音が「虫」や「おバカさん」にあたる「蠢」に似ていることなどが要因かな…と考えています。香港の人たちは、似た発音で揶揄するのが結構な得意技。日本版の放送時、香港の実況掲示板で優柔不断な「はるたん」の言動にいらついた香港の視聴者が「春」の発音を絡めて罵倒する書き込みをいくつか見ました。「田田」なら発音的にも可愛いし、無難です。
また、日本版の部長が寝言で呼んだ「はるたん」を聴いた妻の蝶子さんが「はるか」とカン違いしたように、香港版のフランチェスカは「田田(Tin Tin)」を英語名「ティナ(Tina)」の女性と勘違いします。もし「春春(Chuen Chuen)」だったら、カン違いに誘導する名前付けも難しかったかも。

 

リメイクをすんなり楽しめたのは香港の風景と広東語のテンポのよさと、日本版へのリスペクト

日本のオリジナル版に出演している俳優の熱心なファンの方にとって、リメイク版は納得しにくいところがあるかもしれません。
私の場合
「2018年にデビューしたMirrorは香港でとても人気があると聞くけど、この子たちって誰と誰?」
「黄德斌は昔から無線電視で見ていたベテラン、顔と名前はわかるものの、どういう役者か強い印象がない。部長を演じる格だったかな」
納得するしない以前、役者のことはほとんど先入観のない状態だったので、かえってリメイク版の「大叔的愛」の世界にすんなり入ることができたような気がします。
何しろターゲットは、日本版のおっさんずラブを見ていないかもしれない香港の人たち。香港の風景や家、オフィスの習慣を久しぶりに見られたのが楽しかったし、リズミカルな広東語に乗せられあおられ、グイグイひっぱられていく感じ。
日本版のオリジナルを尊重し、世界観を十分理解したうえで香港に置き換え、7話から15話へ丁寧に、はしゃいでいるようで実は慎重に膨らませているのが感じられた。そのおかげで、大好きなドラマがよく知っている場所で生まれ変わった様子を、気持ちよく見ることができました。

阿田と阿牧の実家の設定も、香港ならではの要素が。

阿田の実家はマンション、両親は移民してしまったという状況が説明され、ああこれは香港の物語なんだと覚悟ができました。そして日本版にはいなかった、結婚して家を出た妊娠中のお姉さんがひとり。
お姉さんは時々、だらしない弟の世話をしに来ていました。阿牧の実家も、ロリで巨乳の妹ではなく、お姉さんがいる設定に。彼女たちの存在が、香港オリジナルの場面展開に関わってきます。どちらのお姉さんも、いかにも香港の明るくさっぱりした美人で素敵でした。

 

オリジナル版7話、香港リメイク15話で掘り下げられた部分

主人公「阿田」や「阿牧」、そして上司「KK」は日本版同様、不動産会社で働いています。香港版は地元の不動産会社がスポンサーについたので、蝶子さんやケンタツ、春田さんの先輩夫妻の「内見」を踏襲したシーンはもちろん、「阿田」や「阿牧」の仕事で物件へ案内する場面がいくつか差し込まれて、リアリティがありました。
香港版の蝶子さん「フランチェスカ」(このいかにも香港な名前!)がKK(これもまたいかにも香港な!)離婚後に引っ越す、海に面した新しい部屋も素敵だった。こういう「物件」が出てくるのも、不動産会社がスポンサーについた強みかな。そのうえ「一般的な香港での家探し」で普通の物件を見にいくシーンは「外国の住まい見てみたい」「香港好き」な人にとって興味深いものだと思います。

 

日本版では謎だった部分が香港版で描かれる

「春田家と牧家の人々はその後の展開をどう思ったのかな?」と日本版では想像していた部分が、香港版ではドラマとして描かれました。阿田のお姉さんが、弟から男性と結婚すると聞かされてもあっけらかんと受け入れる様子や、白タキシードで息を切らした阿田と阿牧父の対峙、それを阿牧母&姉が笑って見守る香港オリジナルの場面はとても良かったので、日本版のファンの皆さんにも観てもらいたいところ。

 

言葉や表情が弾むドラマは広東語と親和性が高い

広東語は、標準中国語に比べると声調のアップダウンが激しい印象があります。実際、標準中国語が四声なのに対し、広東語の声調は6とも9とも12ともいわれるうえ、破裂音や語尾伸ばしも特徴的。
「広東語ってリズミカルで表情豊か、聴いていて楽しい、元気になる」
と喜ぶ人もいれば、
「喧嘩しているの?」
「ねずみ花火が飛んでくるみたいで怖い」
とおびえる人、
「やかましい、下品」
と眉を顰める人もいます。
どの国のどの言語も、話す人や内容によって品のあるなし、トーンも変わるし、聴こえ方は違うもの。
「大叔的愛」は日本版同様、主人公の春田さん=阿田が周囲の人たちの感情の動きに巻き込まれ、振り回され驚くリアクションに笑いながら、物語が進んで行きました。根はいいひとだけれど生活力に乏しくてちょっとハラハラする阿田は、シャキシャキした香港人にしてみれば放っておけない、あれこれ言って面倒みたくなるキャラそのものでしょう。阿田は突然のモテ期到来、お説教やら周りの人のグイグイ来る口調に振り回され、リアクションは日本版に引けを取らない豊富さで捧腹絶倒。賑やかな広東語のリズム感と香港ならではの人との距離感は、おっさんずラブのストーリー運びと相性が抜群でした。

 

あの名場面が、香港のあの場所を背景にリメイク

「おっさんずラブ」オリジナル版で印象的な場面はいくつもあります。たとえば「部長」と「牧」が「春田」の長所と短所をあげつらって激しくけん制し合い「春田」が「俺のために喧嘩しないでください!」と叫ぶシーン。日本版では「東京タワーが見えるどこかの屋上」、見る人が見ればわかるかもしれない場所でしたが、香港版ではヴィクトリア湾と香港島の高層ビルを望む「香港人、もしくは香港に詳しい人なら誰もがどこだかわかる場所」でした。阿牧とKKの丁々発止のやり取りと間に挟まれた阿田の顔や全身のリアクションも面白かった!
ちなみに「存在が罪」は「可愛すぎて食べちゃいたい」に、「おいー!って突っ込めよ」の部分は「ショーリューケン(昇竜拳)だろ?!」になっています。

私が日本版の「おっさんずラブ」に度肝を抜かれ、転げ落ちたシーン。香港版では、九龍サイド・尖沙咀東の陸橋で展開されました。

ラスト近くのもどかしいすれ違いの場面にも登場する、ここも「香港人、もしくは香港に詳しい人なら誰もがどこだかわかる場所」です。

「阿牧」と日本版ではちずちゃんにあたる「梓芊」が橋の上から「阿田」への思いを叫び合うシーン。日本版では1回だけでしたが、香港版では2回あります。
香港版オリジナルとなる2回目の絶叫の場面。香港の夜の海に響く梓芊ちゃんの震えながらも凛とした叫び声、画面越しに観ているこちらの心も震えるような気がしました。

日本のドラマのお約束「日劇跑」もクライマックスに

そしてクライマックスの「橋」は、阿牧の実家がある設定の大澳に。ここはすでに、香港のファンの間で「聖地」になっているそうです。白タキシード姿の阿田が阿牧を探して大澳を駆け抜ける様子は「日劇跑来た!」と大喝采。
「日劇」=日本のドラマをよく見ている香港や台湾の人たちは「どうして日劇には必ず走るシーンがあるの」と不思議に思うらしく、日本独特の文化として「日劇跑」と呼ばれているのです。「走る+ゴミ箱に突っ込むは日劇のお約束だよね!」と言う人もいました。


阿田と阿牧に上下関係なし。対等な口調、広東語の独特なニュアンス。

「阿牧」からの呼び方は、皆と同じで「阿田」。「春田さん」「何々じゃないですか」と日本版でいう「さん付け、ですます調」ではありません。広東語にも敬語はありますが、聴いている分には阿牧は阿田と「対等」な話し方をしています。
日本版は年下から敬語でグイグイ行く、たまに口調が崩れるのが萌えるのかな?
香港版の「阿牧」のため口、阿田をあやすような時もあれば、つっけんどんに突き放す言い方もあり。冷蔵庫に貼った付箋の「スープ飲むの忘れないで」のモノローグも、広東語ならではの親しい人への愛情がこもった口調で、それも香港版の大きな特徴であり、魅力です。

 

上司を「KK」と呼ぶのも、香港ならではの空気感。

香港版では「部長」を皆が「KK」呼びしているのもいかにも香港らしい。部長の下の名前「國強」のアルファベット「Kwok Kueng」からKK。ドラマでは本人がそう呼ぶよう皆に言っています。香港でよくあるパターンで、CKとかTTとかいたな…と懐かしくなりました。台湾では「経理」や「副理」と役職で呼ぶほうが良い場合もあって、香港でもそれを好む人はいる。でもやっぱり、英語名や短縮型が通じるケースが多かったかな。私は香港時代の上司は「ピーターさん」「ジョイスさん」のように英語名にさん付けで呼んでいました。呼び捨てでいいよと言われても、上司にはやっぱり、なんとなくね。それに、香港で年下の子たちに「みみすぁ~ん」と呼ばれるの、好きでした。

みんな大好き・マイマイとカルメンの違いと共通点は?

おっさんずラブファンがみんな大好きなマイマイ・舞香さんの役どころは、香港版ではカルメン姐さん。(香港はいるよねーカルメン!)
カルメンは常に何かを食べていて食べ物に関してはワイルド、八掛気質がかなり強め。日本版で伊藤修子さんが演じたマイマイの、飄々としてマイペースでユーモラスなキャラとはだいぶ違っていました。でも仕事ができて社内の事情通、「Wonderful」の鐵平さんといい感じなる点は同じです。

 

ルイス君とフランチェスカ、姐弟戀の描き方

宇宙人的な言動が面白かったマロの役どころはルイス君。マロ君のような突き抜けた若者的言動というよりも、あっちの女の子こっちの女の子とフラフラしていたけれど、上司の元奥さんフランチェスカと出会い、彼女との関係性で大人になっていく様子が丁寧に描かれていました。演じるのはやはりMirrorのメンバー、スタンレー君。おっとりしているようで一歩間違えたら嫌味になるキャラクターだけど、憎めないリアルな感じで楽しく表現していました。

フランチェスカを演じたレイチェル簡慕華さんも、大人の女性の優雅さ、可愛らしさを表現して人気急上昇だそう。ルイス君とのシーンも可愛いけど、KKとのお別れのシーンは大人のカップルならではの静けさと色香があって、あの場面はため息が出そうだった。

 

はるたんが好きでえーーす!→田田, I love you!

日本で「おっさんずラブ」が人の興味を引くきっかけになったのは多分、吉田鋼太郎さんの「黒沢部長」が田中圭さんの春田君へ
「はるたんが、好きでえーーす!」
と絶叫するシーンのトレイラーではないでしょうか。
舞台出身で声の張るアクの強いタイプの吉田さん演じる「部長」と比較すれば、黄德斌の「KK」はかなり穏やかなキャラクター。それでも、中環の観覧車の光とハート型のライトを背負った
「田田, I love youuuuuuuuuuu!」
のインパクトは香港市民には絶大で、「俺たち、私たちの知らない黄德斌」と放送後から大変な話題になりました。KKが阿田を「田田」と可愛く呼ぶのが衝撃的で面白いから香港の人たちも田田と呼んで一緒に追いかける一体感、疾走感が生まれたみたいです。


香港版オリジナルの台湾出張や出向シーンで、KKの大人の魅力を丁寧に描写

日本版では春田さんが上海へ転勤する流れがありましたが、香港版ではKKと阿田の台湾出張や、台北支店オープンにむけての出向などが描かれていました。
とはいえ、コロナ禍なので台湾ロケはなく、香港で台湾のオフィスや士林夜市を再現。
「阿田」の必死な香港的台湾華語のアクセントも可愛らしいので、興味のある方は台北編のセリフ回しもチェックしてみてください。
でも、この「ふたりで海外出張・出向」は日本版にはない設定。そこでKKの人柄、大人の男性としての包容力や落ち着きも描かれていて、特に「台湾の凶宅(ワケアリ物件)」のシーンは「あ、これはKKを好きになるわ」と納得する描写がありました。阿田がというより、多分香港人みんなあの場面のKKには
「ひょーう」
とときめいたのではないかな?香港の人たちは以前から、大人の男性の成熟した魅力(財力、包容力、スポーティーな体系、きちんと整えた服装や髪型、スマートな態度)を評価し、素直に憧れを示す傾向があったし。
ワケアリ物件のシーンでは阿田が唱える「超高速念仏」も素晴らしく爆笑ものなので、聞き逃さないでください。

 

「スープは炊ける?」「スープを飲んで」香港の食文化から温かみと生活感が伝わる

日本の原作も香港に場面を移し替えれば、食の場面に違いや特徴が描かれるのも面白いところ。「大叔的愛」で良いなあと思ったのは、スープの描写でした。
阿牧は料理が出来ると知った阿田は、「スープも炊ける?」と興奮気味に尋ねます。冷蔵庫に阿牧が貼った「スープ飲んで」のメッセージ、阿田のためにスープを炊いておいた阿牧の「飲むのを忘れないで」と念を押すモノローグの親しい口調も、いかにも香港の広東語らしいアクセント。出来合いではなく、手作りのスープを飲みたがった阿田の食の好みや阿牧が育ってきた環境。大事な人にスープを作って飲ませたいと思う気持ちは2021年の香港にも生きているのが垣間見えて、嬉しかったです。


香港版オリジナル「彼氏目線の日常」は念入りなドルチェなの

本編とエンディング曲の後に、「阿田目線の阿牧」「阿牧目線の阿田」の短いシーンが入ります。食後のドルチェのような、甘いもので仕上げ。
「ファンが見たいものを見せてあげる」
製作陣が真顔で語っていたのは、こういうことなのでしょう。

 

 

出演者の人気大爆発。「大叔」はホットキーワード、社会現象に

香港で「大叔的愛」の放送が始まると、毎日のようにホットキーワードには関連の単語が上位に挙がってきました。私が以前からフォローしていたSNSのアカウントが一斉に話題にし始めたのにも驚いたけど、Facebookに登場した「我老婆嫁左比Mirror導致婚姻破裂關注組」は大きな話題になりました。
※人気がありすぎてクローズドのグループになりました。誰でも参加申請はできます。

https://www.facebook.com/hk.dict/photos/pcb.1657292694660994/1657292607994336/

 

Mirrorは「大叔的愛」に出演するEdan(阿田)、Anson(阿牧)、Stanley(ルイス)も所属する男性12人のグループ。
この「奥さんがミラーファンになり結婚生活が破綻しそうな男性たちが意見交換をする会」は、ちょうど大叔的愛の放送開始とも重なり、結成からたった一週間でメンバーが30万人を突破する勢いのアカウントです。
結婚生活が破綻といってもシリアスなものではなく、奥さんや恋人が買いこんだ「Mirror」グッズに家を占拠されたり追っかけに同行させられるなど、巻き込まれ振り回される男性たちの嘆きやぼやきがメイン。中華圏では好きな男性の俳優やアイドルを「老公(だんな、ダーリン)」と呼ぶことがあるので、「奥さんがMirrorの誰かに嫁いでしまった」設定で「前妻」と呼び、「我々は前夫」と自称するなど、ユーモラスでちょっととぼけた、でも奥さんや恋人への愛情が滲み出る内容がうけて大人気、毎日賑わっています。
たまに「奥さん」からも「あなたたちだって本当はとっくにMirrorファンになっているくせに」「旦那がずっとMirrorの曲を歌っていて耳がどうにかなりそう。ファンになるのは女性だけとは限らない」などの突っ込みが入っています。男性陣もMirror憎しというより「やれやれ」と楽しみつつ「うちの嫁がお騒がせしてすみませんね」とMirrorのメンバーにも親近感を抱いているような雰囲気かな。

 

社会現象を巻き起こした「田田」「阿牧」「KK」。最終回を家族と見
ながらカミングアウトした大学生も

香港の匿名掲示板「DCARD」に、ある学生の投稿が掲載され反響を呼びました。要約すると
「自分は田田と同じ。巨乳の女の子が好きだったのに、まさか彼氏が出来るとは思ってもみなかった。母親は同性愛を受け入れない様子だし彼氏がいるとは話せずにいたけれど、大叔的愛の放送が始まると父も母も友達もみんな田田や阿牧、KKに夢中。この機会に勇気を出して、最終回の日、彼氏を家に呼び家族と一緒に放送を見ながらカミングアウト。両親は驚いたものの受け入れてくれた。これも田田、阿牧、KKのおかげ。もう恋人のことを隠さない。みんなもこれから街で同性カップルを見かけても、気にしないでほしい」

 

※出典:20210716 正式出櫃 多謝大叔的愛

これは一部の、幸せなケースかもしれません。敢えて公開しないことを選択する人もいるし、考え方や状況は様々だと思います。それでも香港初のBLドラマ「大叔的愛」は相当な衝撃を与え、真剣に人と向き合い恋愛した彼らの様子は、広い世代に受け止められた。鬚をはやした正真正銘のおっさんKKが乙女心を炸裂させる様子、戸惑う田田の賑やかなリアクションを指さして笑い転げるだけでなく、香港の人たちに新しい考えを芽生えさせる何か、少なからず影響を及ぼしているのかもしれません。

 

 

旅行が解禁になったら行ってみたい、「大叔的愛」香港ロケ場所

主な場面のロケ場所12カ所まとめ
【大叔的愛】12大拍攝場景大整理!走勻香港實地取景 大澳紅橋/赤柱/中環摩天輪拍拖地點公開

阿田と阿牧のマンションや阿牧の実家はAir BnBに掲載されていました。レンタル可能です。

阿田の実家、阿牧と暮らすマンション(尖沙咀)

阿牧の実家(設定は大澳、実際のロケ地は西貢の一軒家)

 

香港版「大叔的愛」日本との比較画像や製作動画など

日本版と香港版、同じ場面の比較画像あり。香港版では衣装の色味や素材、デザインなども日本の原作を踏襲している場面が多いです。

大叔的愛|40個港版還原日劇瞬間 巨根變大支嘢、Edan超越田中圭

細節+名場面比較傳送門

ViuTVの製作特番動画

 

余談。「香港のことでこんなに笑ったのは、久しぶり」

台湾に来てびっくりしたシリーズのひとつに、「テレビで放送する香港映画に台湾中国語の吹替えしかない案件」があります。
見覚えのある、本来広東語を話しているリズミカルなシーンに甲高い台湾中国語の声では、違和感が強すぎて観ていられない。リモコンで音声をチェンジしようとしても、そもそも副音声の設定すらない放送のことが多いみたい。台湾の家庭のテレビで、広東語のオリジナルを聴く需要はないのかな。広東語嫌いな人も多いしね。そういうと「そんなことない」「私は好きですよ」と反論も来る。でも、「嫌いだ」と口に出す人も、出さなくても広東語を耳にするとあからさまに嫌な顔をする人、聴きたくないといわんばかりにラジオのボリュームを上げる人も、台湾で沢山沢山見て来ました。これは香港から台北に来た私の個人的な体験だけれど、事実です。
香港でさえ、
「正式な書き言葉ではない、やかましい話し言葉」
と英語や中国語で生活している人たちにはバカにされたこともあったよね。
でも、そのやかましくてけたたましいおしゃべりのための言葉には、そこに生きる人の思いや感じていることを思いっきり伝える力、前を向いて進む力があるのよね。
「こんなに笑ったの久しぶり」
香港版おっさんずラブ「大叔的愛」を見た多くの人が言っていました。私も香港のことでこんなに笑ったのは多分、2年ぶりくらいだと思います。

「大叔的愛」日本でも2021年秋に配信が決まっているのだそう!
できれば吹替えでなく、広東語+字幕で見てほしいな。あのセリフが香港も同じように出てきたり、でもこのセリフはちょっと違う。同じところや違うところ、それぞれの街で生まれた作品の魅力と生命力を楽しみましょう。

https://natalie.mu/eiga/news/433870

 

 

劇場版おっさんずラブ、香港ロケの紹介。

「劇場版おっさんずラブ」香港ロケ地情報: 春田さんが駆け抜けた距離を地図でたどる「劇場版おっさんずラブ」香港のシーンで春田さんが駆け抜けた位置を検証。北角から中環まで、驚異の移動距離をGoogle Mapで見てみましょう...

 

 

タイ沼から来られた皆さんへ。
台湾でのタイ的コラムも下記にリンクしていますのでよかったらお進みください。

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ライター/コーディネーター。 香港から猫を連れて台北へ移住後、30年ぶりに東京暮らし。満喫中。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|