台北の街中や地下鉄の駅で時々、修道女の方を見かける。
高齢のように見えるけれど、化粧っ気がなく髪も染めていないから若作りしている同年代よりも、年相応なのかもしれない。とても清潔で慎ましく見えるその人を見て、「一体どんな家に住んでいるのだろう?」と思った。
きちんと片付いた、必要な少ないものだけを持って暮らしているんだろうか。お茶道具が二個も三個もあったり、商品券やいくつものリップクリームがあちこちから出てくるようなことはないんだろうか。
というのも、一昨日の夜中に蚊が出たので起きだして部屋の電気をつけた時
「うわ、ものだらけ」
とびっくりしたせい。
何もないのは寂しいし、好きなものや贈り物が傍にあるのは嬉しいことだけれど、もうちょっとどうにかしないとな。香港から台湾へ、段ボール5個だけでやってきた時は本当にこれだけか、身軽過ぎて男らしいとまで言われたのに、いつの間にこんなことになったのだろう。片づけだの風水だの、ドイツ式シンプルな暮らしとか読んでいるのに、これが私の精一杯なんだろうか。
台北の松山空港で買い物をすることはほとんど無い。
家から近いし、これといって空港で何もすることがないのでいつも出発の一時間前くらいに着いてそれでも搭乗までの時間を持て余すほどだけれど、買い物をしたくなるような盛り上がる気配が、松山空港では感じられない。
その日は前に機内誌で見た香水のことを思い出してフラと化粧品売り場に入ると
「何かお探しですか?」
とにこやかなスタッフに声をかけられた。
「香水を…エルメスの…」
「ヘルメスね?」
「そうヘルメス、新しい…」
「李先生を探してるの?」
笑ってしまって、
「そうそう李先生。いますか?」
「いますよー」
その香水は日本語だと「李氏の庭」、
中国語では「李先生的花園」になるらしい。
Hermès LE JARDIN DE MONSIEUR LI 李氏の庭
修道女は香水の類を持っているだろうか。禁じられていたとしても、こっそり瓶をひそませていたら素敵だなぁ。と思ったら、セルジュ・ルタンスに修道女という名の香水があるのね。またどこかで、探してみましょう。
SERGE LUTENS La Religieuse 修道女