30年ぶりの東京生活

小さな良きことめぐる山手線

ストレスの高い山手線の車内で。

日本、というか東京に帰って来てごみの出し方や買い物の精算など、ルールには慣れました。だいたいどこへ行っても人々は親切だし、システムもちゃんとしている。ごはんも美味しい。水がきれいで、炊いたご飯はつやつやだし、お風呂の水もやわらかい。柔軟剤を使わなくても洗濯物が別物のように仕上がるのが驚きです。

でも、電車の中はストレス。特に山手線は不快なアトラクションの如し。
私は音に耳が敏感すぎるのか?スマホの画面をカチカチ叩く爪の音がとても気持ち悪いし、冬場は豚のように鼻をすすりあげる人が多いのも恐怖です。日本、というか東京の大人の人が、まあまあ着飾り化粧をしたり髪を整えたりしているのに、野放図に鼻をすすりあげたり、バカみたいな大声で笑ったりするのが不思議で仕方がない。スマホの画面をスクロールさせる他人の指使いが目に入るだけで気持ちが悪いので、電車の中では目を閉じ、イヤフォンで耳をふさぐようにしています。ついでに鼻もしっかり閉じたい。満員電車の中で安っぽいローズ系のハンドクリーム塗りだす不届き者が、時々いるから。

その日も戦々恐々としながら山手線に乗り、比較的すいている場所に立って吊革につかまると、目の前に座っていた東南アジア系の男性がさっと立ち上がり「どうぞ座って」と席をゆずってくれました。驚いたけれどありがたく座らせてもらいつつ
(これってレディファースト?それとも敬老?)
と揺れる心を抱えながら
(で、日本の男性たちはどうなのよ)
と目を見開いていると、次の駅で白杖にサングラスの男性が乗ってきました。香港・台湾で培った「必要な人に席を譲ろうと身構える反射神経」が私の中ではまだ生きているので腰を浮かせると、私の正面にいた男性も立ち上がり、白杖のひとにそっと近寄りひじのあたりに触れながら席に座るようすすめてる。
(アジアの席譲り反射神経はともかく、日本の男の人だってやさしい)
ちょっと嬉しくなりました。

席の譲り方は、香港や台湾のひとたちが身をもって教えてくれた私が乗り物の中で、必要とするひとに席を譲る咄嗟の判断と動き方を身に着けたのは、香港や台湾の生活の中で、身をもって教えられたから。東京で同じような動作をすると「素早くて素っ気ない」と言われるけど、仕方ない。...

イヤフォンをつけるのも忘れてにこにこしていたら、私のとなりに座っていた素敵な和装のおばあさまが急にはっとして「あの、目黒はもう通り過ぎたかしら?」。
尋ねられた私も30年ぶりの東京はまだ初心者レベル。不安になり「ちょっとお待ちくださいね」と断ってスマホでGoogleマップを開き、動く「現在地」をお隣に見せながら「今、渋谷を出ました…次が恵比寿、目黒はその次ですね。まだ大丈夫です」と答えると、おばあさまほっとした様子。「ごめんなさいね、いきなり」と恐縮しているので「いえいえ。あの、素敵なお召し物ですね。今日はおでかけですか?」今度は私の方から尋ねると「そうなの、忘年会。雅叙園でウフフ」「あらいいですね。楽しんでいらしてください」
山手線の中ちょっとしたことが連鎖でめぐり、楽しい気持ちで過ごせました。

 

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mimi
ライター/コーディネーター。 香港から猫を連れて台北へ移住後、30年ぶりに東京暮らし。満喫中。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|