久しぶりの日本での暮らし、東京新生活の準備開始。せっかくだから日本のブランドを使いたくて、板橋の「亀の子束子 西尾商店」へ。海外の友達へのお土産にも、東京へ来てくれるなら散歩と買い物、歴史ある建築を見せに連れてきてあげたい、素敵なお店でした。
「亀の子たわし」は子供のころから目にしていたはずなのに、手軽なのか、手を出していいのか、よくわからない存在でした。やわらかいスポンジならどんなものにも使いやすくて、手軽。適当に選んで使い、古くなったら処分する。でも固いたわしとは、どう付き合ったらいいんだろう。昔からあるものなのに、もうわからなくなっていました。
日本に帰ってきたら、メイドインジャパンのものを意識して使おうと思っていました。日本に住んでいた頃には、外国製のものにむやみに憧れ、価値を見出し、所持することに喜びを得ていました。良い物なら良い。以前暮らした香港や台湾でも日本のものは手に入りやすかったものの、値段は割高、それに種類も限られる。
板橋の、静かな商店街をつらつらと歩いて行くと急に現れる「西尾商店」。大正11年、1922年の建築だそうです。関東大震災、戦火も時代の変化も逃れて、よくぞこのまま残ってくれたと、ため息が出ます。しびれてしまって通りを挟んでしばらく店を眺めて立ち尽くし、近づくと、叶うことならあちこち撫でまわしたくなるような気持ち。
台湾では歴史建築や古い建物をリノベーションして再活用、再生を大々的に謳うし、古いものを大切にできる、扱い方が上手だなと思うことが度々ありました。古い工場や廃墟を立て直した場所、好きなところ、良いなあと思うところがいくつかあります。でも、建物の存在に対して撫でまわしたい、しゃがんだり体を屈伸して斜めになって細部を眺めたいと思うのは、「亀の子束子西尾商店」が初めての経験でした。
親切なお店の方とあれこれお話をして、買い物をしてから、許可をいただいて店内の写真も撮らせてもらいました。シトラスの洗剤、キッチンがいい香りになって楽しかった。ボディ用のスポンジ、いつだったか中野の銭湯で肌のきれいな人が身体をタワシで磨いているのを横目で見て、(美とは鍛錬なのか…)と感心したことを思い出します。いろんな形や色のスポンジも可愛い。外国にいる友達にもお土産にしたら喜ばれるかな。持ち運ぶのも軽くて壊れる心配なし、好き嫌いとも無縁。誰のところへ行っても、必ず役にたつだろうな。
東京23区とはいえ、私の住まいから板橋までは小一時間かかります。日本に住んでいた頃も、中野・杉並・練馬のいわゆる「第三学区」がベースだったから、板橋へ行く機会はほとんどありませんでした。なんなら目黒も知らない。山手線で渋谷より先に行くことはなかったから、台湾や香港の人に「中目黒のあのお店いいよね知ってるでしょ」なんて言われても「知らないよ中目黒なんてこわいよ」といまでもオロオロします。
西尾商店で建物や商品のディスプレイも素晴らしいと感動を伝えると、「谷中の店舗にも、良かったら行ってみてください」とお店の方がすすめてくれました。この頃は上野や御徒町、神田に浅草方面も楽しかった。北千住の昼呑みも楽しかったな。谷中もいずれ、行ってみましょう。
東京散歩のコラム
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