選挙の日、台北を歩いていると「今日はオーナー、投票するから里帰り。午後に戻って営業するよ」なんて張り紙をしているカフェや食堂がいくつかありました。日本で知り合った台湾の人たちも、この週末は故郷に戻ると言っている。
投票率が7割を超えるといわれる台湾の選挙。期日前や郵送の投票方法はなく、戸籍のある町に戻らなければならない規則は2024年も変わらないそうです。
移動のためにお金もかかるし、休みもとらなくちゃいけない。台北から新幹線や鉄道、車を使って移動して、めんどくさいな、自分の一票が減るくらい、大勢に影響はないからいいや。とは思わない人が、とても多いのです。
香港で働いていた時、台湾人の同僚が選挙のために台北へ帰るというので
「そんなにまでして投票するの?」
驚いて尋ねると
「だって私、台湾人ですよ」
彼女は笑って言いました。
香港から彼女の戸籍のある台北まで飛行機で一時間ちょっと、日帰りもできる距離とはいえ、選挙の投票のためにというのは、当時の私には理解できない行動でした。
その後台湾で暮らし始め、あれやこれやを考え、選挙の盛り上がりがすぐ近くに迫ってくると「こりゃ楽しいわ。投票するわ。いいなあ、私も参加したい」と思ったものでした。台湾の選挙、こんな面白くて熱を肌で実感できるお祭りに、参加しない手はありません。そんなムードに煽られるだけで、投票率が7割を超えはしないでしょう。
でも、活動に参加しようとは思わない。あの選挙ベストを着る自分が許せないから。なぜ台湾では団結するときになると、しゃれっ気も色気も一切振り切ったベスト着用になるの。今度聞いてみよう。
選んで、投票する自由。自分の票を持つ権利。自分で未来を選んで創る希望。自由を持っている、台湾の人たちはそれをとてもよく理解していると、私は思います。水や空気と同じように、自由なんてあってあたりまえだと思っていた私は、日本から香港、台湾へと移り住んで、自由を持っているかどうかを意識するということを、遅まきながら知りました。自由なら、自分の住む場所に、責任を持つこともできる。
だって私、台湾人ですよ。
なんで店を閉め新幹線に乗り、あるいは海を越えてまで選挙に行くのか。
あの時の同僚の声と笑顔に、理由は教えてもらっていたみたいです。
台湾と香港の暮らしで、見たり聞いたり考えたりしたこと
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