台北が外食天国とはいっても、私は普段の食事は自分で作り、外で買って食べるのをあまり良しとはしなかった。
自分では作ることができない、手に入らない食材を味わう、なによりも誰かと一緒に食べるための外食は楽しい。でも、毎日の食事は出来るだけ自分で作ろうと思っていた。
空腹を満たすために外で出来合いのものを買ってきて食べる罪悪感。たいして美味しくもないものにお金を出さざるを得ないことへの屈辱とか、がっかりする気持ち。そんな大層なものでもないけれど、できれば自分で食べるものは自分で作ったほうがいいのだろう。
でも、罪悪感や屈辱感、がっかりする気持ちを私に持たせない店が近所にいくつか見つかった。そこでは働く人たちのてきぱきした動作やはきはきとした口調、「ありがとうね」とお腹の底から声を出しまっすぐにこちらを見て言う明るさに、食べ物に上乗せする力を貰っているような気持ちになる。どのお店もGoogleの評価は3点台で、高いとはいえない。でも私は好き。ブログで何度も書いているけれど、他人の評価は自分と違うバックグラウンドを持つ他人の経験、もしかしたら一回きりの経験で書いているかもしれない。それは私の経験ではない。
家の近くでなにか食べようと思う時、メニューだけでなく、お店の人たちの顔が浮かぶ。そういうお店に、私は点数や白黒をつけようと思わない。
食べたり飲んだりするのは尊厳に関わると、香港で暮らしている間に身に染みた。台湾に来て改めて、それは誇りなのだと感じる。生きるための最低限のこと、文化、贅沢、創意工夫。生き延びるためのこと。
「いつも美味しいもの食べているんでしょう」
ときかれるとびっくりする。贅沢をしている、情報を沢山持っている、いい想いをしていると勘違いされるのは落ち着かないけど、
「そんなことないです」
と否定するのは、この街の人たちや自分にも失礼だ。だから
「はい」
と素直に簡単に答えるようにしている。
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