木柵の廃墟を秘密基地に。Ruins Coffee RoasterはCafe Junkiesの焙煎所として2016年の夏にオープン
オープン当初は焙煎所としての場所だった「小さな廃墟」Ruins Coffee Roasterは、週末だけカフェだったり、何やらイベントを行う不思議な秘密基地のようでした。
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伝説のカフェ「Cafe Junkies」
2015年のクリスマスの頃、ガイドブックの取材で当時はまだ営業していた健康路の「Cafe Junkies」に伺った時、オーナーのWillさんから
「今、木柵に焙煎所を造っているんだ」
と聞きました。
木柵といえば、台北動物園に近い、山側のエリア。ずいぶん遠くだなと思ったのですが、廃墟を見つけて、自分たちの手でいちからこつこつと、一年もかけて作っているのだとこと。
Willさんはカフェのオーナーであり、Staycoolというバンド活動もしている方。さらに焙煎所も作れるってどういうこと?と呆気にとられると、「トイレも直せるよ」とドヤ顔で胸を張りおどける様子にみんな大笑いしたものでした。
そして2016年の夏、Junkiesの常連やたくさんのお友達が集まって、Ruins Coffee Roastersのオープニングを祝福しました。
小さな場所、川のほとりの、整備工場と並んで見分けがつかず、住所だけではタクシーも通り過ぎてしまうのに、そこだけ暖かく良い香りがしていて、人も犬も猫も、集まるところにはどこだって集まるんだと感心したものです。
その夜、「いずれここでStaycoolのライブをやろうと思ってる」と聞いて「それはいいね、絶対聴きに来るね」と約束。
名だたるカフェが日替わりでRuins Coffee Roastersへやってきた夏
8月から9月にかけて、数日あるいは日替わりで、台湾中から名だたるカフェがRuinsに臨時出店。アンテナショップというのかな?
お店のコンセプトもバリスタもスタッフもそっくり持ってきて、Ruinsでコーヒーやお菓子を出すイベント、試みでした。
このイベントに六張犁のPEG COFFEEも参加していたのは、個人的に感無量なところがありました。猫を検疫のために台湾大学の動物病院へ預けていた時、面会の帰りにはここでコーヒーを飲んで、寂しさを鎮めていたのです。
それにしても、よくこれだけのお店が集まって協力してくれたね?
Willさんのお姉さんであるCharleneさんに尋ねると、
「みんな忙しいし準備も大変な上、儲けがでるわけでもないんだだけど、楽しいし、面白い試みでしょう。だから快く来てくれたのね」
よそのカフェなんて、ライバルなんじゃないの?
丁度その頃、別の業界のことだけれど、同業者の悪口を巧妙に広めたり、足の引っ張り合いをするひとたちを見てしまい、暗澹たる気持ちになっていたので、このRuinsでの試みは、私には小さな衝撃でした。
ここに集まってきた人たちは、自分たちのカフェを確立している。何年もかけて、自分たちで苦労して作ってきたお店と味、きっと自信も自負がある。だから留まるのではなく、牽制しあうのでもない、
「面白いことしたい」
そのためにはちょっとくらい寝不足や体が疲れても、楽しんでしまう。
そんな様子を見て、美味しいコーヒーを飲みながら彼らとお喋りをしていると、すっとするような、余所見をするより修練する、自由な清々しさを感じました。
Staycool,地球上で一番「音楽」だった台北の夜
StaycoolはStanley、Will、Brian、Mitchell、Tracy、Pongpong の6人編成バンドでした。そこからギターのBrianとベースのMitchellが抜けることになって、6人でのラストライブが、夏にRuinsで行われました。観客は、床の上に敷き詰めたコーヒーの麻袋や、いつもはコーヒーを飲むための椅子に座って。
去年の暮れの取材の時、お店で買えるブレンド豆ではどれがお勧め?と尋ねたら
「室内流行樂。これは6種類の豆をブレンドして作っているんだ。僕らのバンドも6人で音楽を作っているように」
Willさんがとても大切そうに語ってくれたのが印象的でした。6人で音を奏でるバンド、そこから2人が抜けるのは相当ショックなことではないかな…と恐る恐る出かけたのですが、楽しかった。素晴らしかった。廃墟だった場所を作り変えて、どうしてこんなにいい音が出るんだろう。バンドの名前の通りにStay cool、熱くなりすぎず、音が重なり、溢れるようで、でも何一つ零れ落ちない。
この地球上で今夜一番音楽的な場所は、台北のはずれの川岸にある、この小さな秘密基地だと、確信しました。
バンドを抜けるふたりも始終笑顔で、MCの時間は「脱退の理由」として「家庭や仕事を持って、バンド活動をしっかり出来ないのは心苦しいし、将来のことも考えて決めたこと」と、きちんと語っていました。
仕事を持って音楽も続ける、でも6人そろってCD制作やライブ活動ともなれば、スケジュールを組むだけでも、簡単なことではないでしょう。
無理に続けるのではなく、辞めること。どちらも、責任と自由だな。
台湾の人は自由に動き回るのが好きだなあと眺めることが、これまでも多かった。でも、勝手なわけじゃない。
好きなことをする、責任も取る。クールであること。自由であること。
そんなことを、改めて教えられた夜でした。
まあ理屈はおいといて、とにかく楽しかったのね。間近で素晴らしい演奏を聴いて、見ることが出来るって、本当に震える。
特にヴィオラを担当するPongpongとTracyのふたりがとても素敵だった。ライブの後、外に出てお喋りや挨拶をした時も、もうこの感激は言葉なんかじゃ言い表せなくて、ふたりを両脇に抱えてぎゅうぎゅう抱きしめてしまった。
楽しかったな。
Ruins Coffee Roasters 小廢墟咖啡館Shop Data
Ruins Coffee Roasters
住所:台北市木柵路三段242號
営業時間:火-日 14:00-22:00(夏季営業時間)
月曜休み
アクセス:MRT木柵駅から徒歩15分
公式URL:https://www.facebook.com/RuinsCoffeeRoasters/
Staycool Official
Café Junkies
台北市台北市松山區健康路9號
※カフェジャンキーズは2016年4月21日に現在の場所での営業終了しました。
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