台湾人の女の子とおしゃべりをしていたら、香港人の女の子がやってきたので彼女にも話しかけ、三人の輪になった。
香港から来た子は、都内に数年住んでいるとのこと。
「東京に、美味しい菠蘿包のお店はある?」
台湾人が尋ね
「私も知りたい」
日本人も話題にのったものの、
「無いわ」
香港人の子はあっさり。
台湾人はちょっと驚き、腑に落ちないようだったけれど、
「実は私も日本に帰ってきて、まだ納得いくものに出会ってない。台湾なら、美味しい店はいくつかあるけど」
と私の見解を説明すると、
「そうなのね」
と納得、残念そうだった。
「じゃあ、香港ならどこのお店のが美味しい?」
台湾人、せめて本場の美味しいお店を知りたくて香港人に尋ねたけれど
「え…」
香港人の戸惑いの理由が、私もわかる。
「家の近所の、だよね」
笑って助け船を出すと
「そう、家の近所の、美味しい店のを食べる」
台湾の子には、私が台湾で美味しいと思った店の名前を教えた。帰ったら行ってみると、彼女は地図に印をつけた。
「そういえば東京に、美味しいタピオカミルクティの店ある?」
香港人にきかれた台湾人、はっとしたように
「ない…!」
私は好き好んではタピオカミルクティを飲まないので日本国内の状況を分かっていないけれど、彼女の反応を疑わなかった。
なぜなんだろう。日本の水、素材、何を食べても美味しいと喜べるのに、そもそも素材が合わないんだろうか。香港や台湾の水、空気、湿度そのものも、美味しさになっていたのだろうか。そこまでの作り手が、まだ日本にはいないのだろうか。
香港で暮らしている頃、うまい菠蘿包はどこにあると彷徨うなんて、考えたこともなかった。近所にいくつかある菠蘿包を売る店の、好きなところへ行けばよかった。素足にサンダルで行ける場所に、美味しいのがある。それだけのことだった。
近くに美味しいものがあった。
なんて贅沢な、幸せなことだったんだろうと、今更ため息が出る。





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