うちの猫の名前は福ちゃんといいます。でも、台湾と香港では「とら」「フグ」「陳福」と、場所や呼ぶ人によって名前が変わります。発音や文化にカギがあるのかもしれないので、情況をまとめてみました。
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台湾の検疫では日本の名前で「フクチャーン」
福ちゃんが香港から飛行機で台湾の桃園国際空港に到着した日。台湾大学付属の動物病院隔離所まで同行してくれた検疫官は、クールな感じの女性だった。口数は多くない、賢そうで冗談は通じない、堅い雰囲気の人。
動物病院の人たちは台湾最高の大学機関といっても、やはり「猫ちゃん大好き」があふれ出ていて「猫ちゃんの名前は?」「中国語の書類上では、小福(シャオフー)です」
私は香港の動物病院での登録、検疫のために書類に記入した名前を答えた。
「普段はなんて呼んでいるの?日本語の名前はありますか」
「福ちゃんです」
私が答えるや否や、病院のひとたちは
「フクチャーン」
と呼び、黙ってやりとりを聴いていた検疫官の女性も、手続きが終わるとぼそりと「フクチャン」と呼んで帰って行った。台湾の検疫官の女性の普段の可愛らしさが垣間見えたようで、ちょっと嬉しかった。
まるで指名手配のような、檻に貼られた名札。
他の猫ちゃん達は、飼い主さんか病院スタッフに抱っこされた正面の写真。福ちゃんだけ、病院の方が盗撮した写真が使われていた。狂暴すぎて、抱っこどころの騒ぎではなかったから…。
台湾の友達は「とら、元気?」
中国語の「小福」は発音が「小虎」に似ている。台湾の友人たちの間でうちの猫の暴れん坊ぶりが伝わると、「とらは元気?」と聞かれるようになった。福ちゃん→小福→小虎→とらと変換して広まり、定着したらしい。
香港ではあまりの凶暴さに、動物病院で「狂った小さな虎」と呼ばれたことがあった。だから私は訂正せず、台湾の一部の友人たちからの「とら」呼びを受け入れている。
台湾に浸透しているちゃん付け文化
台湾には、日本風のちゃん付け、さん付け文化が根付いている。統治時代の影響もあるのか、新聞やニュースでさえドライバーのことを「運醤」、ウンチャンと言ったりする。今は日本でもあまり聞かない呼び方。
台湾セブンイレブンのマスコットキャラクターは正式名はOPEN小將だけど、「OPEN醤」オープンちゃんと呼ぶ人も多い。
「醤」は正確にはチャンではなくヂャンの発音に近い。だから、台湾の人たちが呼ぶのは「フクヂャン」とも聴こえる。
私もたまに台湾のひとに「ミミヂャン」と呼ばれることがある。かなり年下の台湾の子に「ヂャンづけ」で無邪気に呼ばれるのは、照れくさいけれど嫌じゃない。
香港の獣医さんはオーストラリア訛りの広東語で「狂った猫」
台湾で「フクチャン」と呼ばれて驚いたのは、香港では一切それがなかったから。動物病院で「FUKU CHAN/小福」と名前を記入しても、「小福(シウフォッ)」と広東語読みで呼ばれていた。
香港の動物病院には西洋人の獣医も多い。ある獣医さんはうちの猫の狂暴さを「Crazy little tiger」と形容してから
「黐線猫(狂った猫)!」
オーストラリア訛りの広東語で言ってHAHAHAと笑い、香港人の女性看護師に「死鬼佬(くされガイジン)」と叱られ、脛を蹴られていた。
獣医さんも看護師さんも、口は悪いけどいい人たちだった。猫の病気をしっかり治してくれたし、陰性だと結果を聞いて安堵のあまり泣いた私を獣医さんはハグしてくれ、看護師さんは時々様子を聞く電話をくれた。いつも素っ気なくて「元気なら良い。それじゃ。」と切れてしまう短い電話だったけど。
「フグ」「陳福」香港人は自由に呼ぶ
香港人の友達が福ちゃんと呼ぶと、「フグちゃん」と聴こえることがあった。FUKUとローマ字で書いてみせても、彼らが読むと「ふ・くー」と間延びする。日本語を習っていない限り、正確な発音は難しいみたい。香港時代の福ちゃんは太っていたので、河豚でもいいかと思い、これも受け入れていた。
最近は「陳福」と呼ぶ香港人の友達もいる。陳は広東語でチャンだからちょうどいい、このほうが呼びやすいという。
台湾で「福ちゃん」が「とらちゃん」になったのも、香港では名字がついてしまったのも、なんだか可笑しかった。猫の名前を正確に発音しようとしてくれるのも、呼びやすい名前で何度も呼んでくれるのも、どちらも嬉しい。うちの猫を気にかけて、自分たちなりに名前を憶えて呼んでくれるのが。
台湾や香港の猫関係コラム
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