香港と台湾で違うこと、似てること

台湾メロンパン?いいえ「香港菠蘿油(ポーローヤウ)」。香港から来たみんな大好き「ポーローパウ」をこの際イチから紹介します

「台湾メロンパン食べたよ」日本の友達がいうのを聞き嫌な予感がしたら案の定、菠蘿油(ポーローヤウ)のことでした。愛するものが祖国・日本で間違った認識のまま浸透するのは寂しいから、香港から来たみんな大好き「菠蘿油(ポーローヤウ)」「菠蘿包ポーローパウ」を改めてイチから紹介しましょう。

 

「台湾メロンパンって言うのが流行っているそうですね。記事を書きませんか」
と執筆依頼が来た時は、嗚咽をこらえながら綿々と「違うんです、これを台湾と名乗っては、わたし香港にも台湾にも顔向けできません」と説明し、理解を得られてほっとしました。
これは「台湾」でも「メロンパン」でもありません。
「香港」の「パイナップルパン」です。
愛するものが祖国・日本で間違った認識のまま浸透し始めている?それじゃあんまり寂しすぎるから、ここで「違う、そうじゃない」をまとめておこうと思います。

台湾でも人気、香港から来たパイナップルパン「菠蘿油(ポーロ―ヤウ)」

「菠蘿油(ポーロ―ヤウ)」は広東語。香港の庶民派カフェ食堂「茶餐廳」や、街のパン屋さんでおなじみの人気メニューです。台湾でも夜市の屋台や専門店があるし、香港式食堂「茶餐廳」には必ず置いていますが、「油=ヤウ」が台湾中国語の発音で「ヨウ」となる場合も。一般的なパン屋、コンビニの菓子パンコーナーにもあり、今では台湾でとてもポピュラーな「香港から来た菓子パン」です。

パイナップルのような外観のサクサクしたビスケット状のトップに覆われた菓子パン「菠蘿飽(ポーローパウ)」に、スライスしたバターかマーガリンを挟んだものが「菠蘿油(ポーロ―ヤウ)」です。
発祥地を冠にして無理やり説明的に直訳するなら「菠蘿油」は「香港パイナップル・バターサンド・パン」かな!
「菠蘿飽」の形状や歯ごたえは、日本のメロンパンに似ていないこともないけれど、別のもの。
「菠蘿」は広東語でパイナップルのこと。台湾の中国語でパイナップルは「鳳梨」、香港の「菠蘿」とはそもそも種類が違うのだそうです。

「香港出身」にこだわるのは、菠蘿包がみんなの大切なパンだから

香港の茶餐廳で、厨房から店のお兄さんが菠蘿飽の並んだプレートを抱えてテーブルの間を練り歩き
「どいたどいたー、出来立ての熱々だよー!」
と声をあげると、いつもそわそわしてしまいました。
もう食事がすんでお腹がいっぱいでも、出来立ての菠蘿飽は別腹です。
良く通っていた茶餐廳では、頼まなくても
「はい、出来立て。あんた食べるでしょ?」
と菠蘿飽を乗せたお皿をテーブルに置かれ、黙って受け入れたことも度々ありました。
菠蘿飽にバターを挟んだ菠蘿油。これはカロリー面ではちょっとためらう悪魔的な魅力、罪悪感のかたまりです。だからそう頻繁にではなく
「今日は疲れたし」
「わたし頑張ったから」
「これ食べて、明日も頑張るわ」
「良いではないか、良いではないか」
と、ご褒美的に注文していました。
お供はもちろん、濃厚な「香港式ミルクティー」。台湾でも「港式奶茶」と呼ばれる、香港の茶餐廳ならではの滑らかで濃厚なミルクティーと菠蘿油は、相性最高です。

菠蘿包(ポーローパウ)を「台湾メロンパン」と呼ばれる違和感の理由

広東語のざわめきや香港の街の匂いとともにある愛しい菠蘿飽や菠蘿油が、なぜかこの頃日本あたりで「台湾メロンパン」と呼ばれている。もちろん台湾でもあちこちで売っているけれど、この地で人はみな「香港から来た悪くて美味しいヤツ」と理解した上で食べているはずです。
なのに日本へ行ったら「台湾メロンパン」?
冗談じゃないぜ……と拳を握りしめながら、違和感の理由を考えてみました。


台湾には台湾の、香港には香港の良いものがあり、人々は密かに静かに誇りを持っている。
台湾には台湾の良いものが沢山ある。メイドイン台湾に、台湾の人たちは高いプライドを持っています。
菠蘿油を台湾でも見かけるとはいえ、明らかに香港発祥のパイナップルパンに、台湾の人が「台湾メロンパン」と名付けるでしょうか。
それは誇り高い台湾の人のやり方では無いと、私は思います。

台湾パイナップルは世界一。畑で実る金色の王冠台湾の夏、果物の収穫もまっさかり。パイナップルやマンゴー、ライチの畑を見に出かけてきました。...

 

台湾ご当地物へのプライド。
そもそも台湾には有名すぎるパイナップルケーキ「鳳梨酥」があるのに、「菠蘿」まで台湾ものにする必要はありません。

でも、
「これは台湾メロンパンじゃないよ、香港発祥だよ」
といちいち訂正して歩くのは、例えていうなら「Be together」を聴いて「鈴木あみの曲!懐かしい~」と無邪気に喜んでいる90後の年代の子たちに向かって
「Be togetherのオリジナルはTM Networkだよ」
と口を挟み「えっそうなんですか?」と敬語で返されるような、余計なお世話でしょうか。

 

このご時世、香港どころか海外へ旅行には行けません。たとえ解禁になっても、香港への旅行者が急に回復するのかは、わからない。率直に言えば、日本からは台湾のほうが行きやすいだろうと思います。私も旅行が解禁になった暁に、どっと押し寄せてくれることを期待して待っています。美味しい物を食べに行こう。あっちへこっちへ、遊びに行こう。
でも、もし日本から来た人が台湾で菠蘿油を見て
「台湾メロンパンだ!」
と無邪気に言うのを聞いたら、私は心が千切れるかもしれない。
そう覚えてしまった人に対してではなく、この商品にこの名称をつけて流通しようと企画したどこかの誰か、美味しければ香港だろうが台湾だろうがどっちだって構わない、台湾とつけておけば売れるだろうとマーケティングした誰かに対して
「それは勘弁してくれ」と
「香港のものは香港のものだ」と
心の中でパイナップル型の涙を流します。

 

台湾で香港ムードにひたるお店を紹介しておきますね

 

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曙・初見咖啡 Chujian Cafe。 港町・基隆のオールド香港スタイルカフェ港町は危険な香り。基隆のオールド香港スタイルカフェ「曙・初見咖啡 Chujian Cafe」へと雑居ビルの階段を上がっていくと、滑らかでひんやりとした香港式ミルクティーに巡り合えました。...

 

 

https://mimicafe.net/saikee/

 

 

台湾で、香港ムードにひたる場所。

だから香港へ行きたい。

 

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mimi
ライター/コーディネーター。 香港から猫を連れて台北へ移住後、30年ぶりに東京暮らし。満喫中。 台湾と香港に関する現地情報の執筆や、撮影手配などの仕事をしています。 |Instagram| |Tweitter| |Profile| |Contact|