台北のおしゃれエリア・富錦街のはずれで見つけた町のパン屋さん「裕記香港西點麵包廠」。見た目は普通で美味しいエッグタルトを、気の置けない友達へのお土産と、生活の潤いに。
おしゃれで素敵な富錦街のはずれにも、台北のひとの暮らしがあります。富錦街の突き当りから新東街へ入っていくと、そこはゆったりとした草埔市場が広がっていました。野菜や果物、海鮮が並ぶ通りに、「裕記香港西點麵包廠」が古めかしい様子で佇んでいます。
昔ながらの……レトロで趣きのある……などと、きれいごとは言いません。
写真で見て受けた印象よりも、実物はだいぶ古びて、しゃれっ気のないお店でした。
店の名前に香港がついているし昔ながらのパン屋のメニュー。包んでもらいながらお店の人に聞いた話では、香港から渡って来た師匠が作っているわけでは、ないのだそう。袋のローマ字が香港をHSIANG KANGと綴っているのを見て、香港や広東語の系統はなさそうだなと、うすうす察してはいたけれど……。
香港の有名店がいくつか台湾にも店を出しているけれど、私はそれらのお店の味があまり好きではありません。誘われても断ったけれど一度どうしても行かなければならず、案の定香港の店と同じかそれ以上に美味しくなかった。使っている粉のせいなのか柔らかいだけでへんな癖のあるパン類と、うっすくて苦くてあっまいだけのクソみたいなミルクティをもったいぶって香港の老舗でございと売り続ける厚かましさが大嫌い。
そんなわけで、小さな町のパン屋さんに期待して来ました。パンやお菓子は20元からとお手頃だし、少し買い物をしてみましょう。
海綿蛋糕。
シフォンでも古早味でも台湾カステラでもない。ごく普通のスポンジケーキです。懐かしいなあ、香港の町のパン屋にあるスポンジケーキの味がする。ボソボソの一歩手前、少しだけ塩気がきいているようなシンプルな味。スポンジケーキというくらいだから、これにクリームや果物を飾り、小さなケーキを作ってもいいかもしれない。小さなビニールパッケージもレトロとか復古調とか狙ってない。ただ古臭いだけで、猛烈に可愛いです。
びっくりしたのはチキンパイ(鶏肉派)。サクサクした口当たりの香ばしいパイと濃厚なクリームチキン、どちらも美味しくお互いを引き立て合う、これは今後富錦街へ来たなら、ここまで足を延ばしてまた買いたいものになりました。絶賛にもかかわらず、私は肝心のチキンパイの写真を撮っていません。台湾のパン屋さんならわりとあるから、気にせず先に食べてしまったのね。でも、ちょっとそこら辺のパン屋で買って「まあ、まあ…こんなもんだろう」とぼんやり食べていた味と、ここのは違ったよ。次に行ったらまた必ず買おうと思います。
こちらのカレーパイ(咖哩餃)と、エッグタルト(蛋塔)は記録しました。いかにも「香港のパン屋っぽい」組み合わせです。
カレーパイは、インド料理屋で食べるサモサとも違うし、私は好みではなかった。もっさりしていて、スパイシーだけれどどこを目指しているのかわかりにくかったかな…チキンパイのように、次もまた買いたいとは思いませんでした。
そしてエッグタルト。形は整っていないし、不細工だよね。
でも、それも含めてとても可愛いく、美味しかった。
たまごが濃く、ちゃんと甘いけれどくどくないカスタードは、崩れないけれど柔らかい。無骨なパイ生地との絶妙さは多分、黄金比率や計算というより、長年連れ添った組み合わせだからこそ。
気取る必要も並ぶ時間もいらない、町のパン屋さんの美味しいエッグタルト。これを見つけた安心感は、生活に地に足がつく喜び、この町で暮らす幸せの小さな象徴のようでした。
お土産に持っていくには、見た目でそんなに盛り上がらないかもしれません。でも、気の置けない友達、「これね、見た目ぱっとしないけど、普通に美味しくて好きなのよー」とざっくばらんに言える相手になら、喜んでもらえると思います。温めなおして食べてね。一個25元です。
「裕記香港西點麵包廠」 店舗情報
住所:台北市松山區新東街52號1樓
電話:02 2763 3697
営業時間:6:00~19:30 月休
公式サイト:なし
交通:MRT「松山機場」「南京三民」から徒歩20分
バス307、63などで「新益里」下車徒歩3分
アクセスマップ
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