2020年5月19日、台湾の衛生福利部が一本の動画を公開。タイトルは「台灣模式」、新型コロナウイルス対策台湾モデルの時系列でした。
台湾の新型コロナウイルス対策、「The Taiwan Model 台湾モデル」。動画では2019年12月から2020年4月1日まで、政府や第一線で従事する人たち、市民の様子を時系列で再現しています。
※2020年6月11日 多言語版が公開されました。
日本語字幕とナレーション版「台湾モデル」はこちら
https://www.facebook.com/tsaiingwen/posts/10156737747876065
5月21日現在、動画字幕は英語と中国語版のみ。文字が小さく流れも速いので、時系列を書き起こしてみました。台湾の街の様子や出来事、私自身感じたこと、起きたことも流れに併せて振り返っています。
世界が注目する「台湾モデル」の新型コロナウイルスの封じ込めは、〝島国シャットダウン”で完封となるほど、生易しいものではありませんでした。ウイルスとの戦いは、時間との戦い。春節を返上し、日を刻んでいく台湾の人々の様子、5分と少しにまとめた記録をご覧ください。
この動画が公開された日、台湾の参加は叶わなかったWHOの総会が開かれていました。私は胸に悪態が渦巻いたし、口からこぼれ出ました。でも、この動画を観たら、気持ちが鎮まった。
世界中の誰もがあまねく健康で、平穏であってほしい。その願いだけに落ち着いて行きました。
Contents
台湾モデル時系列と、台湾の出来事
見出しの大文字は「台湾モデル」の動画の時系列。前後して、当時の様子を補足しています。「動画の時系列だけ、当時発生していたことは不要」な方はシンプル版をどうぞ。
2019年12月 武漢-台湾便で検疫を開始
動画の開始からすぐに、2003年のSARSまん延時、大規模な集団感染が発生し、病院封鎖となった台北・和平医院の様子が差し込まれます。
「台湾人は、死にたくないんだ」
台湾人の知り合いが、私を日本人と知ったうえで言いました。
SARSがまん延した期間、感染への恐怖と経済に打撃を受けた記憶。あの辛さは、絶対に繰り返さず、阻止しなければならない。
その警戒力は、2003年当時「感染ゼロが続いている」と安心したなかで発生した病院封鎖、全世界で最後にSARS感染地域から解除された台湾の経験からなるものかもしれません。
2020年1月 中央感染症指揮センター発足
7日 武漢を感染症危険レベル1に指定
NHKの1月9日の報道に疑問を感じて、ツイートしました。
海の向こうの出来事じゃない。春節のアラートを鳴らしてよ!と地団駄を踏みつつ。
中国・武漢の肺炎について
さきほどNHKのニュースで詳細に伝えていましたが、大切なことが抜けている。
1月24日から30日まで旧正月。多くの旅行者が移動します。マスク、手洗い、うがい、アルコール消毒、人ごみを避けるなど、予防をきちんとしましょう。https://t.co/EhGjuF7xkK
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) January 9, 2020
12日 台湾から武漢へ、専門家を派遣
20日 「多言語での防疫PR」を開始
この頃、24日から始まる春節の大移動を前に不安で仕方なく、香港で起きたSARSのことを忘れないようにブログを書きました。
23日 中央感染症指揮センターが「毎日定例会見」を始める
今も毎日、午後2時から定例会見が行われています。会見は記者の質問が終わるまで、無制限。
24日 旧暦の大晦日、「マスクの海外輸出制限」を公布
台湾の人たちにとって、春節は一年で最も大切にされる連休です。
家族とともに過ごす、あるいは念願のゆっくりとした海外旅行、楽しみにしていた台湾で一番長い連休は返上され、そこからずっと、「台湾モデル」は動き続けています。
そしてこの頃にはもう、台北の街中でマスクがいよいよ品切れになっていました。
ジムの帰りに薬局をのぞいてみると、医療用マスクの棚はからっぽ。売り切れましたかと尋ねると、カウンターに少しだけ残っていて「これで全部。次の入荷は一か月後」とのこと。
「いくついる?でも、全部買わないで。他の必要とする人にも残してあげて」とカウンターの女性に懇願されました。
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) January 24, 2020
25日 健康保険カードで「旅行歴読みこみシステム」を開発
この頃、SARS発生から終息までの時系列をふりかえり、まとめていました。街中にはマスク姿の人が増えてきた、春節期間。
台北市内の住宅街、マスクをして歩いている人が増えた。今日から開けている店もボチボチあって、薬局、日用品店でマスクを探している人が多い。でも、近所のコンビニもドラッグストアも品切れ。薬局を外からのぞいてみると、内地から来たとみられる家族連れがいた。入れなかった😷
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) January 28, 2020
29日 隔離・検疫をしている市民の「地域サポート」開始
隔離検疫をしている人たちに食料品などをドア前まで届けたり、電話で様子を訊ねたり、地域でのサポートが行われていました。
29日「隔離検疫市民の追跡システム」も稼働
このシステムで、検疫違反の「脱走者」が複数確保されています。
罰金100万元コースもありました。「人権より人命」の対応です。
衛生福利部の柴犬ちゃんから中文、英文でお知らせ。在宅隔離中、あちこち出歩かないこと。
台湾では検疫規定違反者に対し、最高額100万元(約360万円)の罰金が科せられたケースがすでに出ています。氏名も公表されました。 pic.twitter.com/XibIrmAfMF
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) March 23, 2020
30日 全国のマスク製造商を徴用
マスク売り切れ、不安が募り始めたけれど、まだ何となく明るかった。
台北、夕方のコンビニで
「マスクは?」
「もうないの?」
続々と人が来て「マスクは?」「今日の分は売り切れ。次は多分火曜日の11時かな」
「じゃあ朝から並ぶ!」
「どうぞどうぞ!」みんな声がでかくて明るいのが救い。
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) February 2, 2020
2020年2月 マスク実名制販売システム稼働
3日 「マスク実名制販売」システム3日内に稼働
政府がマスクを買いあげ、健康保健カードで管理販売する制度がスタート。マスク争奪戦や価格高騰などの混乱は避けられ、公平に行きわたったため、台湾の市民は落ち着いていられたと思います。
付随するように、民間による「マスク購入MAP」アプリも多数登場。
ホテルや観光地、レストランなどで検温、消毒後の入場規制が始まっていました。
台湾南部でロケのため毎日違うホテルに泊まっています。
昨日はチェックイン時、デコで体温測定。
今日のチェックインはデコ測定プラス「2週間以内に中国大陸へ行ったか」を口頭で質問されました。体温が37.5℃以上だと、チェックインできない可能性があるようです。
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) February 4, 2020
5日 「ナショナル・マスクチーム」設立
マスク製造に携わる男性の子供が絵日記を描く場面。
一カ月も帰宅できないお父さんを「誇りに思う」と。
香港、マカオからの入国、渡航制限開始。
本日より香港、マカオからの台湾入国が制限されます。台湾からの渡航も控える必要があります。
爵爵&貓叔さんのFBから。
冷静かつ理性的な理解を示す香港、マカオの皆さんに感謝も。台湾に来る予定だった香港の友人達も、こうと決まれば落ち着いて行動しています。
香港加油!臺灣加油! pic.twitter.com/TMEtOFEzIp
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) February 7, 2020
9日 企業と政府が協力、「アルコール消毒液」を製造開始
12日 検査の強化
2月14日には、当局から日本渡航への注意喚起が発令されました。
16日 「入境電子システム」を正式導入
19日 「ダイヤモンドプリンセス号」からチャーター便で19人帰国
24日 中央研究院が治療薬「レムデシビル」の合成に成功
台湾当局は日本からの入境者に対し、14日間の自主的な健康管理を推奨しました。手洗い、一日に二度検温、症状がなくても、外出や公共の場に行く際は外科用マスクを使用するなど。
検疫ではありません。まだ。 pic.twitter.com/n1lDP9SOH7
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) February 24, 2020
25日 国会で「厳重特殊伝染性肺炎防治及紓困振興特別条例」成立
25日 110万着の「防護服を製造」、前線を支援
日本と台湾では、新型コロナウイルスへの警戒心や対策が異なっている。政府やお役所、民間の温度差も違う。「もういい、知らない。勝手にしろ」と投げ出したくなる。でもすぐに、それじゃだめだと思いなおす。放ってはおけない。私は諦めないぜ。https://t.co/U8mwPTmqpy
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) February 25, 2020
27日 1日あたりのマスク生産量が1200万枚を超える
2020年3月 出入境制限、海外渡航禁止
5日 1週間に購入可能なマスク枚数は大人3枚、子供5枚に
その後、2週間で大人9枚、子供10枚へ増加調整
日本では台湾政府のマスク管理体制が評価されていることを伝えると、友達は嬉しそうだった。「台湾がここまで出来るとは思わなかった」と、台湾人である友達も驚いたそう。
「台湾にいて良かった」台湾人の友達は両手を胸にあてて言った。https://t.co/tcR6vy6vjT
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) March 4, 2020
8日 中央研究院は検査時間を15分に短縮するキットの開発に成功
11日 武漢からのチャーター機 帰国第二便が到着
12日 「マスク実名販売制2.0」稼働開始
マスクのオンライン予約、コンビニやスーパーで受け取り可能に。
16日 約16000人の帰国者が自宅検疫
3月17日には、日本への渡航中止勧告が出ました。
いつも楽しい台湾の衛生福利部(厚生省)が珍しく強い言い方🔥私が受け取ったニュアンスは
「行くなっつってんのに感染した奴には補償ないしむしろ実費加算。検疫で嘘書いた奴は罰金上乗せ。出国前によっく考えな💢」
今日の台湾、新たな感染者8人。全員洋行帰りだそうで…https://t.co/en3PYiHqPM pic.twitter.com/XG1fpfwGgq
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) March 16, 2020
というわけで、しばらく日本へ里帰りはできません。
台湾から日本への渡航中止と退避勧告。罰則や検疫規定まとめ https://t.co/argIj4CWVV
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) March 17, 2020
18日 台湾とアメリカ「連合防疫」を展開
3月19日から、台湾居住権を持たない全ての外国人の入境が禁止になりました。
台湾南部、高雄にある本屋さんが「旅行を制限されている時は目の毒だから」と海外旅行関係の書籍を封鎖。
メッセージには『今は大人しくしていよう、皆で台湾を守ろう
第一線にいる医療関係者に応援を
一日も早くこの疫病を押さえこもう』https://t.co/HdrZtic4tB#フォントが素敵#消除旅遊慾望 pic.twitter.com/rmEAQl17XO— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) March 18, 2020
30日 オーストラリアと防疫物資協力へ
2020年4月 国際社会との連携、強力
1日 国際社会へ、マスクや医療物資などの提供と協力
各国から「台湾モデル」に注目が集まる。
日本へも、医療や学校などへ200万枚のマスクが寄贈されました。
自由時報の記事に上がっていた写真。台湾からのマスクが機内から姿を現したところでしょうか。
台湾も、まだ気は抜けません。一緒にがんばりましょう。
200萬片口罩運抵 日政府發言人:感謝台灣溫暖支援https://t.co/Setbi3MgyL#日本加油 #多謝台灣 pic.twitter.com/swSqB9UGDd
— 𝗆𝗂𝗆𝗂|33ʀᴘᴍ (@mimicafetw) April 22, 2020
Health for All, Taiwan can help, Taiwan is helping
蔡英文総統は「Health for All, Taiwan can help, Taiwan is helping」の演説で以下のように語っています。
2003年、台湾は孤立したまま、独自にSARSと立ち向かわなければなりませんでした。
今、我々は世界と共に新型コロナウイルスに立ち向かいます。
助けを必要とする友人を、誰も見捨てることは出来ません。
全ての人々の健康のために、Taiwan can help, Taiwan is helping.
台湾では5月から野球観戦、スタジアムでの飲食も解禁になりました。マスクの備蓄は1億枚を超え、マスク購入制限も緩和される見通しです。
浮かれたい気持ちはあるけれど、動画の最初に差し込まれた2003年の和平医院を思うと、そうじゃない、まだ早いと思ってしまう。
あの病院封鎖は、香港で集団感染を引き起こしたアモイガーデンの住人と列車に乗り合わせた人が引き金になったことを思い出すと、
(まだ油断できない、何が起きるかわからない)
と不安な気持ちになります。
それでも、春節を返上して尽力してくださった人達、今も続けて台湾と世界が健康を取り戻せるよう努力している人たちに守られている心強さがあるは、間違いのない事実です。
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