2019年、やっぱり行きたい香港。実際に行って確認した、今だからできる安全で心地よい旅
「10月に、香港へ行こう」
日本にいる友達と約束したのは7月ごろ。友達は東京から、私は台北から香港へ向かい、空港で待ち合わせをしようと考えていました。
報道で香港の情況を知り「しばらく旅行は様子を見よう」と保留にする人が増えています。日本の外務省から香港渡航に注意喚起レベル1が発令されているため、勤務先や家族から「香港へ行ってはいけない」と止められるケースもあるでしょう。
「サバイバル&ラグジュアリー」
をテーマにした今回の香港旅行。
サバイバル:10年ぶりに香港に来る友達を、危険な目に合わせるわけいにはいかない。怖がらせるような場面も見せたくない。
ラグジュアリー:いつもより良いホテルに泊まって、気持ちよく過ごそう。美味しいものを食べて、のんびりしよう。
この2点を心がけました。
日本へ戻って出勤した友達が同僚たちに
「香港どうだった?大丈夫だった?」
と尋ねられて
「普通に楽しかった。ていうか行くなら今でしょう!」
おススメするほど、安全に、いつも以上にすがすがしい香港そのものを満喫してきました。
今「香港、楽しいよ!」とヘラヘラ言うのは不謹慎と叱られるむきもあるけれど、私はみんなの顔が見たいし、香港にお金を(微々たるものだけど)落としたい。
「香港に行きたい、でも大丈夫?」迷ったり悩んだりしている方のために、ホテル選び、出かけた場所、注意するポイント、危険回避のために登録しておきたいアプリやサイトをまとめます。
2019年11月13日追記:
このコラムは10月中旬に書いたものです。現地情報や友人たちからの報せによると、あれからさらに香港は緊張状態が高まっています。
日本国外務省の危険情報は「レベル1:十分に注意してください」で13日午後2時現在変更されていませんが、個人的には不要不急の渡航であれば十分に検討し、「今は行かない」決断をすることも大切だと考えます。
Contents
ホテルの価格が下がってる。こんな時だから、おすすめは心地よくすごす5スターホテル
旅行の計画を立て始めた当初は、佐敦のホテルを仮に押さえていました。けれどもそのホテルは、尖沙咀警察署の近く。何度か催涙弾が飛んだエリアなので、避けたほうがいいと考え一旦キャンセルに。
ホテル価格を改めてチェックしてみると、どんどん下がってきていました。通常なら一泊2万円前後のホテルが8千円ほどになっていたり、なかには千円を切っているところも。
「870って、円?ドル?元?」
旅費の中でもホテル代が重くなる香港でこの値段、通貨を間違えているのではないかと、何度も確認したほどです。
今回の香港旅行で気分転換をしたい友達と
「思い切っていいところに泊まろう」
と決め、あまり騒動が起きていない「尖東」、チムサアチョイイーストの九龍シャングリラに泊まることにしました。
設備が良く、妙な仕掛けのない、落ち着けるホテル。ここはMTR「尖沙咀(チムサアチョイ)」駅や「尖東(チムサアチョイイースト)」駅に通じる地下道の入り口も、すぐ目の前にあって便利です。
結果、九龍シャングリラに泊まって正解でした。ロビーは欧米人の宿泊客でごった返し、グランドフロアにあるハーバーフロントの「Tapas」バーも、欧米人で大にぎわい。客室に入れば、隣の部屋や廊下から人の気配や生活音は全く聞こえない静けさ。朝晩は星光大道を散歩して、尖東噴水広場の茶餐廳や、広場に面したバーにも行ける。
九龍シャングリラでは、スタッフの方たちのホスピタリティや笑顔にも、元気づけられました。
今の香港で、気持ちを落としたくないから良いホテルに
8月に香港に来た時もすでに価格が下がっていたので、尖沙咀の「そこそこな値段」のとあるホテルに泊まってみたのですが、これは失敗でした。
チェックインに行ってもあごと目線で「他の列へ行け」と指示されたり、こちらから「おはよう」「こんにちは」「ありがとう」と言っても無言。ここ数年の香港では見たことがないほど、感じが悪かった。
8月の後半は香港全体が意気消沈しているような、いつも行く場所の人たちや友人たちもちょっと疲れているような様子でした。だからホテルの人たちも微妙な気分だったのかもしれないと、自分を納得させたけれど
(この対応なら、気楽なホステルにしたほうがましだった)
(ここにはもう二度と泊まらない)
と後悔しました。
今の香港だからこそ、中途半端なレベルのところに泊まって嫌な思い、気持ちが落ちるような目に遭いたくない。数千円予算を足して確かなサービスの中、心地よく過ごす香港の旅を、強烈におすすめしたいと思いました。
九龍シャングリラには日本人、日本語スタッフの方もいるので、英語や中国語が苦手でも心強いと思います。
エレベーター内のカーペットが毎日変わるのも、楽しみでした。
今回も利用したホテル予約サイト
https://www.agoda.com/
※ホテル公式よりも価格が低く、予約システムもわかりやすいので便利です。
今回、ツアーを利用していた日本人女性のグループを空港で見かけました。
きちんとした大手旅行会社のガイドと車つきのツアーを利用するのも、今の時期は心強いでしょう。「老舗の大手旅行会社」なら「非常事態にもツアー参加者の所在を確認して責任を持つ」ので安心です。「格安系」では、そこまでの対応をするとは限らないので、ツアーのサービス内容や条件の確認は慎重に。
2019年10月の香港で、訪れた場所
ルーフトップのバー
オープン時間17時きっかりに入ったバー。暮れていく香港の街を眺めながら、食前のお酒。高所恐怖症の人には勧められないけれど、気取っていなくて、賑わっていても人の話し声が気にならない。好きな場所です。
街の中あれこれ
10月いっぱいで現在地の営業を終える「黑地」にも、ご挨拶に。お皿を買いました。
年内には旺角・上海街へ移転します。
ANA Travel & Lifeに書いたコラムで、黑地を紹介しています。
“超級香港迷”伊藤修子さんが紹介する レトロかわいい! 香港スタイル・グッズ
https://www.ana.co.jp/travelandlife/feature/original/vol273/
黄大仙
「占いをしたい」という友達と、久しぶりに「黄大仙」へ。
午前中、以前なら参拝客のお線香を避けるので一苦労したけれど、それほどの混雑ではありませんでした。服や髪につく煙の臭いや灰も気にならないほど。清々しかった。
地下鉄を出て廟の入り口まで張り巡らされたビラや、壁や地面にスプレーで書かれた文言に、友達は息をのみ少し青ざめていたので、「文宣作品」としてなぜこうなっているのかを解説をしました。
黄大仙らしく、こよみに見立てたビラ。香港の文化に創意工夫を重ねる若い香港の人たちのセンス、本当に素晴らしいと思う。
いつか「こんなこともあった」と言える日に、これら香港人の創意工夫が活きた「作品」をまとめた一冊の本を見たいです。
https://mimicafe.net/joyintears/
すがすがしい!星光大道(アベニュー・オブ・スター)散歩
尖東の九龍シャングリラに泊まって良かったのは、朝に夕に、ここへの散歩に行きやすかったことです。
これまで見たよりも、人は少なかった。それでも、お散歩やジョギングを楽しむ香港人がいたし、欧米の人たちがとても多かったのが驚きでした。
聴こえてくるのは広東語と英語や、ドイツ語。人をかき分けずに歩くことができ、耳も心地よい。ヴィクトリア湾の風に吹かれて、清々しい時間を楽しみました。
李小龍、昼と夜。
香港島の急な坂道と石段がサバイバル
「久しぶりに来たから、飲茶がしたい」
友達のリクエストに
「すんごいところと、おしゃれなところ、どっちがいい」
と確認すると
「すんごいところ」。
上環の「蓮香樓」へ行きました。
ちょうど昼時で、いつもなら相当待つので覚悟して。店内は賑わっていたけれど、座るところはいくつかって、すぐに案内してもらえました。勿論相席。
「劇場版おっさんずラブ」冒頭の香港シーンで登場する場所
蓮香樓を出たら、腹ごなしに周辺やPMQをぶらぶら。機内エンターテイメントで「劇場版おっさんずラブ」を観て来た友達に「はるたん、ここにもいたよ」と説明しながら散歩を。
劇場版を見て、はるたんの香港での移動シーンが凄まじかったのでつい、出没箇所と距離を調べてしまいました。香港在住者か、香港好きで土地勘のある人には共感されるかもしれない、細かすぎるネタです…。
西營盤までトラムで移動して、坂道を上り、「Hashtag Coffee」にも。オーナーバリスタのJackさんがおススメしてくれた、ミルクとエスプレッソのグラデーションを目と舌で楽しむ「Dirty」にしました。
30℃は切っていたものの、10月の香港はまだ日差しも強かった。香港島の石畳や急な坂道は友達にとってしんどいものだったらしく、
「香港のサバイバルは、香港島の斜面」
息も絶え絶えに、笑っていました。
懐かしい味、香港ならではの雰囲気は健在
「やっぱり茶餐廳が好き」
10年ぶりなのに、長いスプーンでレモンをつぶす動作は忘れていなかった友達。レモンスライスがたっぷり入った「凍檸茶」アイスレモンティを何回か飲んでは、嬉しそうに言っていました。
友達が「絶対にまた行きたい」と言っていた「澳洲牛奶公司(オーストラリアデイリーカンパニー)」も。
相変わらず混んでいるけれど回転が速く、すぐ入れました。勿論ここも相席。いつものお兄さんたちも元気、味も健在です。
楽しい旅行の記録はこの辺まで。下記では、香港旅行にあたっての注意点などをまとめています。
香港旅行の注意点
空港の入場規制
2019年10月現在、香港国際空港は入場規制が敷かれています。
中にはいるためには
- 24時間以内に有効な航空券やE-チケットと旅券
- 通行パス
などの所持をチェックされます。これらが無いと入ることが出来ないので、見送りや出迎えは空港建物外でとなります。
帰国時、空港に入る際にはオンラインチェックインでダウンロードした搭乗券や、Eチケットを提示できるよう、用意しましょう。
エアポートエクスプレス
運行時間変更、九龍(カオルーン)駅停車なしも
情況によっては「九龍(カオルーン)」駅に停車しない、運行時間が変更になるなどの対応が敷かれます。九龍駅停車が休止になると、九龍駅でのシティチェックインも停止するので注意してください。
このコラムの下で、エアポートエクスプレスを運営するMTRのサイトやアプリを紹介しています。
エアポートエクスプレス乗り場は「B出口」側
空港到着ロビーにはA出口、B出口ふたつの出口がありますが、2019年10月現在、エアポートエクスプレス乗り場は「B出口」側のみとなっているので、利用を予定している方はBから出ると便利でしょう。
お友達や家族を出迎える際、チケットがなければ空港に入ることはできず、空港内にホームがあるエアポートエクスプレスでは落ち合うことができないので要注意です。
外のバスターミナルや駐車場であれば、問題ありません。
デモや集会、危険エリアの情報取集
香港旅行に備え、危険回避や情報収集のため、ブックマークやダウンロード、登録をしていたサイトを紹介します。
デモや集会予定の月間カレンダー
集会やデモの予定はSNSなどでもチェックできますが、私は月間カレンダー式になっているこのページを見ていました。中文版と英語版があるので、見やすいほうで確認しましょう。
事件や事故を受けて、突発的に抗議集会に発展するケースもあります。次に紹介する「リアルタイムマップ」も併用して、情況を確認しましょう。
リアルタイムマップ
集会やデモ、あるいは事件や事故などが発生した場合に警察の配備が敷かれます。このリアルタイムマップで、どのエリアが危険か確認し、近寄らないように注意します。
これは10月21日、九龍サイドでデモがあった日の夕方のマップ。アイコンをタップすると、情況の説明が出ます。白い煙が破裂するようなアイコンは「TG」、Tear Gas=催涙弾を表すので、絶対に近寄らないように注意します。
こちらは翌日午前中の状態。大きな騒動にはなっていません。
外務省「たびレジ」と在香港日本国領事館
外務省の「たびレジ」に登録をしておくと、旅先の情報が現地領事館や大使館からメールで送られてきます。日本語でのニュースリリースなら理解しやすいので、万が一に備えて必ず登録しておきましょう。
日本領事館の連絡先:(香港国番号852) 2522-1184
日本領事館のサイトより
【問い合わせ先】
○在香港日本国総領事館(領事部)
※当館は緊急と判断される事態には土日休日を含め24時間対応します。下記の代表番号にご連絡ください。
住所:46/F, One Exchange Square, 8 Connaught Place, Central, Hong Kong
香港中環康楽広場8号交易広場第一座46楼
電話:2522-1184 国外からは(地域番号852) 2522-1184
MTR(地下鉄やエアポートエクスプレス)のアプリ
2019年10月に入ってからは、地下鉄運行は夜10時まで、市内と空港を結ぶエアポートエクスプレスは「九龍」駅に停車しないなど、運行時間や停車駅が変則的になっています。サイトやアプリでアラートが出るので、英語と中国語ですが、MTRを利用する際にチェックをすると良いでしょう。
※「MTRのアプリで位置情報収集をされる」ため、香港で集会などに参加する人はアプリをスマホからアンインストールする、位置情報取得を許可しないなどの対応をしています。
一般の旅行であれば問題ない(はず)ですが、気になる方はWEB版を利用するか、帰国前にアンインストールしましょう。
黒い服は避ける
デモや集会では、黒い服がドレスコードになっています。
黒い服を着てマスクをしているだけで警察にひっぱられる可能性もあり、外国人も対象になるので避けるようにしてください。
8月にはデモの無い日に黒い服をファッションとして楽しんでいる人を多くみかけましたが、10月は少ないように感じました。
マスク禁止法
香港政府は緊急法を採用し、「マスク禁止法」を発令しました。
ただし、病気や職業上で必要な場合は除外されます。
10月の香港、街中ではあまりマスクをしている人は見かけませんでした。
元々、香港の人たちはマスクを顔にかけることは好みませんでしたが、2003年のSARSの流行以降、予防のためかけることに抵抗は薄くなっています。
しかし、マスクをしていた親子3人や、妊娠している女性まで警察にひっぱられたケースがあります。
情況に十分に注意し、万が一の場合に備えてパスポートを常時携帯、日本領事館の連絡先を控えておくなど、予防線をはってください。
ボイコットや攻撃の対象になっている店舗
香港市民からボイコットの対象となり、「改装」と称して破壊や落書きなどがされている店舗があります。利用者が攻撃されることはありませんが、「どうしても必要」な場合を除き、訪問は慎重に検討してください。
マキシム(美心)グループ
創業者親族の発言内容に反発した市民がボイコットを続けています。
※図は蘋果日報、LIHKG 討論區より
スターバックス、元気寿司、一風堂など日本でもおなじみのブランドも同グループです。「日本への反発ではなく、フランチャイズ元への対応なので誤解しないでほしい」といわれています。
吉野家
こちらもフランチャイズ元の発言が問題となっており、日本への反発ではありません。
中華書局
有名な書店ですが、こちらも攻撃された店舗があります。
優品360
小型スーパーのチェーンで、こちらは市民を襲った「福建グループ」との関連疑惑がもたれています。会社は「無関係」と声明を出していますが、反発は収まっていないようです。
レノン・ウォール
各地にあるレノンウォール。香港の現代アートを友達に見てほしいのは山々だったのですが、ごくまれに襲撃事件が起きるため、今回は安全を考慮して近寄りませんでした。
台北に設置されていたレノンウォールの記録。
香港旅行の注意点まとめ
- デモや集会の予定を事前にチェックし、該当する日はそのエリアを避ける。
- デモや集会は週末が多いので、可能であればスケジュールを平日に組む。
- 予定がある日は香港の広い範囲で地下鉄やエアポートエクスプレスの運行が停まることがあるので、車での移動は余裕を持たせる。→ ホテルの近くで遊ぶことをおすすめ!
- 服装に注意する。
- リアルタイムマップで確認し、警察車両が大量にたまっているエリアには近づかない。
- 警察署、警察官、警察車両に近寄らない。
警察官と目を合わせない。挑発的な発言をしない。思うところがあっても討論しようとは思わないでください。
※現場に出ている警察官は英語や北京語のレベルにも問題がありますが、そもそも会話が成立しにくい傾向があります。広東語が出来る人も、我慢してください。 - 万が一のために、身分を証明できるよう旅券を持ち歩く。
- 空港の中で待ち合わせは、24時間以内有効な航空券を持っていなければならない。
- レストランが閑古鳥などの話も聞きますが、人気店は混雑しているので侮らず、可能であれば予約を。
こんなふうに並べたてると「やっぱり怖い」と怯んでしまうかもしれないですね。状況は常に動いているので、旅行の予約をした後で変わっている可能性もあります。
私自身は7月、8月、10月とでかけた香港で、いずれも無事に過ごすことが出来ました。運が良かっただけかもしれない。でも、注意をすれば危険は回避できます。
香港のすべてが四六時中、煙に包まれているわけではありません。
笑ったりご飯を食べたり、働いたり勉強したり、次に行く旅行のことを考えたり、普通の静かな生活を送っています。相変わらずエスカレーターは速くて、信号機はカチカチうるさくて、風や木々にも、香港ならではの色と香りがありました。
観光客が少なくて、歩いていても清々しい、なんだか1990年代前半に戻ったみたいな街の空気感。香港が好きで、危機管理が出来るのなら、今は行き時だと思います。
香港旅行のお役立ちコラム一覧
※記載した内容は2019年10月22日現在のものです。状況は変化するので、ご利用時には関係個所の最新情報を確認してください。
※いうまでもなく、どの国や地域でも「旅行」の危機管理は自己責任のもとで行ってください。
※文章、画像等の流用や転載は固くお断りします。